小規模宅地の特例と空き家譲渡所得3000万円控除の矛盾点が解消。老人ホーム入居でも3000万円控除適用可能に。

日本には空き家が300万戸以上あると言われており、放置されたままに空き家を解消すべく、

平成28年4月1日より、空き家を譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円控除する特例措置が続いていました。

 

しかし、介護等の必要性により、老人ホームに生活の拠点を移す高齢者が増加している中、

同特例には問題点や矛盾点が存在していました。

 

1人暮らしの高齢者が、介護を理由に自宅から老人ホームに入居した場合、

自宅敷地について「小規模宅地の特例は適用可能」であっても、

「空き家3000万円控除が適用できない点」です。

 

今回平成31年の税制改正により、その問題点がようやく解消される事に。

従前の内容と照らし合わせ、改正後の空き家の譲渡所得3,000万円控除について、

ざっくりではありますが説明します。

 

all paints by Ryusuke Endo

 

空き家を売った時の譲渡所得3000万円控除とは

まず先に、空き家を譲渡した場合の譲渡所得3,000万円控除の特例とは、

ざっくりとこのようなイメージです。

 

① 1人暮らしの親が自宅で死亡します。

② 子供は実家と敷地を相続し、実家は空き家になります。

③ 売却する為に実家をリフォーム、または取り壊して更地にします。

④ 自宅又または敷地を売却し、売却による所得から3000万円差し引きます。

※ざっくりとしたイメージである為、詳細の要件は、国税庁を参照してください。

一般的なモデルケースで考える

空き家の譲渡所得3000万円控除の特例を利用する場合、

一般的には親が自宅で1人暮らし、子供が独立しているケース多いと思われます。

それゆえ、空き家が増加しています。

 

今回は「小規模宅地の特例」と「空き家3000万円控除」の比較のため、

父親1人、息子1人のモデルケースを想定してみます。

 

 父親1人が自宅で一人暮らし。息子は賃貸アパートに住んでいます。

 

 

 

② 介護が必要な父親は終身老人ホームへ入居し、自宅は空き家に。

 

※老人ホーム入居により、父親の生活の拠点は、自宅から老人ホームへ移ります。

 

③ そして父親は老人ホームで生涯を終える事となりました。

 

小規模宅地の特例と空き家3000万円控除の矛盾点

上記の場合、空き家を譲渡する前に、息子は父親から実家と敷地を相続します。

父親は老人ホーム入居により、生活の拠点が老人ホームへ移動し、自宅は空き家に。

しかし要件を満たせば、実家の敷地について、小規模宅地の特例を受ける事ができます。

 

 

上記のモデルの場合、小規模宅地の要件は次のようになります。

【いわゆる特定居住用宅地の要件】

① 父親(被相続人)に配偶者、同居する法定相続人がいないこと

② 父親死亡の3年以内に、息子が自分の持ち家に住んだり、息子自身の配偶者の持ち家に住んだことがないこと

③ 息子が申告期限まで、実家の敷地を保有すること

④ 父親死亡の3年以内に、息子は3親等以内の親族や、特別な関係がある法人所有の家屋に住んでいないこと

⑤ 息子は過去、実家を所有していないこと

 

【老人ホーム入居後の要件】

① 父親の老人ホーム入居は、要介護認定を受け、介護の必要性によること

② 父親の老人ホーム入居後、実家には誰も住んでいないこと

③ 父親の老人ホーム入居後、実家が貸し付けられていないこと

 

父親の生活基盤は老人ホーム入居と同時に、自宅から老人ホームに移ります。

相続税法においては、老人ホーム入居理由が「介護等の必要性など」要件を満たせば、

父親は自宅に住んでいたとみなされ、小規模宅地の適用が可能でした。

 

しかし、空き家譲渡に伴う譲渡所得3,000万円控除の特例の場合、

「父親は亡くなる直前に、実際に自宅に住んでいたこと」が大きな要件となっていました。

一度老人ホームへ生活基盤を移してしまうと、自宅に住んでいたとみなされることはありませんでした。

 

上記のモデルケースでは、父親は亡くなる直前に自宅に住んでいない為、

息子は引き継いだ自宅を売却しても、空き家3000万円特別控除は適用ができません。

 

 

よって、老人ホームに入居してしまった場合、小規模宅地の特例は適用可能でも、

空き家譲渡に伴う譲渡所得3,000万円控除の特例は、適用が出来ないという矛盾が生じていました。

老人ホーム入居前に自宅に住んでいれば、空き家3000万円控除適用可に

そこで平成31年において、この矛盾が解消されることとなりました。

前述の通り、空き家譲渡に伴う譲渡所得3,000万円控除の特例のネックになっていたのは、

「亡くなる直前に、実際に住んでいないと適用できない」という点です。

この部分の要件が緩和され、老人ホーム入居前に住んでいればよいことになりました。

 

上記モデルケースでは、父親は老人ホームへ入居直前に自宅に住んでいた為、

空き家3000万円控除の適用が可能となりました。

 

 

要するに亡くなる直前に要介護認定や障害等の理由により、老人ホーム等に入所をしていた場合でも、

空き家譲渡に伴う譲渡所得3,000万円控除が適用可能となりました。

 

改正前と追加された老人ホーム等の場合の家屋の要件は、下記の通りです。

被相続人居住用家屋の要件(従前の家屋の要件) 老人ホーム等に入所をしていた場合の要件(拡充された要件)
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供
されていた家屋であること
介護や障害者施設入居等により、被相続人の居住の用に供されなくなる直前においてその居住の用に供されていた家屋であること
昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有
建物(マンション等)を除く。)であること
同左(改正なし)
相続の開始の直前において被相続人以外に居住者が
いなかったこと
介護や障害者施設入居等により、被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人以外に居住者がいなかったこと
相続の開始の直前において被相続人が主としてその
居住の用に供していたと認められる一の建築物に限
られること
介護や障害者施設入居等により、被相続人の居住の用に供されなくなる直前において被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物に限られること

※本記事ではざっくりとした改正内容の把握です。

詳しい要件は、国税庁のHPを参照ください。

(国税庁:個人の方が土地・建物等や株式等を譲渡した場合の令和元年度 税制改正のあらまし)

用時期

この改正は、この改正は、個人が平成31年4月1日以後に行う対象譲渡について適用されます。

(令和5年12月31日まで。)

まとめ

今まで小規模宅地の特例に認められていた内容が、空き家3000万円控除にも適用されただけであり、

当然の改正のように感じます。

ざっくりとした説明のみに留めている為、詳細の要件について、

国税庁HPを参照してください。