軽減税率導入に伴う簡易課税制度の特例とその注意事項

この10月、消費税10%&軽減税率導入が実施され、消費税の記帳方法は区分経理が導入されました。

 

事業者によっては、経理処理の消費税区分が新8%対応がない、食料品も10%にしていたなどということもあるのかもしれません。

 

消費税を納める事業者にとって、旧税率、新8%、10%、そして区分経理など、消費税の計算には手間と煩雑さが伴います。

 

特に仕入や経費関係について、区分経理や8%と10%を区分することは、面倒に感じる方も少なくありません。

 

消費税の計算では、仕入れに係る消費税は一切考慮せず、売上の消費税額だけで納付する消費税額を計算する簡易課税制度が設けられています。

 

そこで、軽減税率導入や消費税10%に伴う簡易課税の特例や改正事項、また簡易課税選択に伴う注意点についてまとめておきます。

 

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通常の消費税の計算方法

消費税の納税額の計算は、通常の場合(以下、原則方式)は、売上で受け取った消費税(仮受消費税)から、仕入や経費で支払った消費税(仮払消費税)を差し引き、その差額を納付します。

◆ちょっとした例◆

税抜売上 1000万円 ・・・売上の消費税(10%)100万円

税抜仕入   600万円 ・・・仕入の消費税(10%) 60万円

 

 

しかし、支払った消費税(仮払消費税)を売上で受け取った消費税から差し引くためには、適正な帳簿記帳や経理、請求書の保存が必要です。

 

とりわけ、10月からの軽減税率の導入により、10%と新8%を区分して経理を行う必要があり、帳簿作成に関して煩雑さが増しました。

 

また、仕入れや経費が少ない事業者にとっては、消費税の納税は多額になりがちです。

 

そこで、売上で発生した消費税の金額のみで、消費税を納める金額を決めてしまおうという制度が簡易課税制度です。

 

原則方式よりも簡易課税を選択した方が、消費税の納税が少なくなる方には大きなメリットがあります。

 

また、売上で発生した消費税さえ正しく把握すればよいため、仕入や経費に関わる消費税区分や区分経理など、複雑な事務負担から解放されます。

(もちろん、口述するデメリットもあります。)

易課税制度による消費税の計算方法

簡易課税による消費税の計算は、ざっくりいうと、売上で発生した消費税の10%から60%を納税するという考え方です。

 

何割を納めるかは、自身が営む業種により異なります。

 

例えば、小売業を行う方の場合、ざっくり言うと、売上で発生した消費税の2割を納める事となります。

 

正確には、小売業の場合は、売上により発生した消費税の80%を、仕入により生じた消費税とみなします。

 

結果的に、売上に係る消費税の20%相当額が納付となります。

◆ちょっとした例◆

税抜売上 1000万円 ・・・売上の消費税(10%)100万円

税抜仕入   600万円 ・・・仕入の消費税(10%) 60万円

小売業を営んでいる  ・・・売上消費税の80%が仕入による消費税とみなされる

             (売上消費税の20%が納税となる)

 

原則方式と簡易課税方式の違いは、下記のモデルとなります。

 

 

上記の場合、簡易課税の方が、原則方式と比べて納税額が少なく有利です。

 

また、簡易課税適用により、有利となった原則方式との納付差額は収入になります。

 

なお、売上から発生した消費税うち、仕入による消費税とみなされる金額の業種別割合は下記の通りです。

 

業種の判定は細かくわかりづらく分かれており、選択する際には細心の注意が必要です。

業種仕入の消費税とみなされる割合
第1種(卸売業)90%
第2種(小売業)80%
第3種(農業、林業、漁業、建設業、製造業、食料品製造業)70%
第4種(飲食店、加工業、その他)60%
第5種(金融業、保険業、その他のサービス業)50%
第6種(不動産業)40%

令和10月以降の簡易課税制度の特例

軽減税率導入に伴い、区分経理などの事務負担に対応できない方は、一度簡易課税を考えてみてもよいのかもしれません。

 

また、簡易課税により一度消費税額を試算し、本則よりも有利となる場合には、簡易課税の検討を念頭においてもいいでしょう。

 

しかし、通常の場合には、簡易課税を選択する為には、次の2つの条件が必要です。

 

1、2年前の消費税がかかる売上が5,000万円以下の方

2、簡易課税の選択を希望する事業年度の開始前日までに届け出を行うこと

 

 

例えば個人事業主の場合、令和元年(平成31年1月1日)から簡易課税を選択したい場合、平成30年12月31日までに簡易課税の選択を行う届け出を、税務署へ行う必要がありました。

 

 

 

 

しかし、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する事業年度中は、その条件が下記の通り緩和され、希望する事業年度から簡易課税を選択することが可能です。

 

・区分経理することが難しい方

・2年前の消費税がかかる売上が5,000万円以下の方

・簡易課税の選択を希望する事業年度の末日までに届け出を行うこと

 

個人事業主の場合、令和元年12月31日までに簡易課税の届け出を行えば、令和元年度(平成31年1月1日)から簡易課税の適用が可能です。

 

 

 

 

又は令和2年1月1日から令和2年12月31日までに簡易課税の届け出を行えば、令和2年度(令和2年1月1日)から簡易課税の適用が可能です。

 

 

特例を利用する場合、平成31年1月からすべて業種区分設定が必要

先述の特例を利用して簡易課税を適用する場合、平成31年1月1日からの売上については、すべて業種区分の設定が必要です。

 

収入の中に、小売による収入(第2種)、飲食店による収入(第4種)、駐車場収入(第6種)などが混在している場合、それぞれ各業種別に収入を分ける必要があります。

 

また、9月までの旧8%と10月以降の新8%、10%についても、正確に区分して記帳する必要があります。

簡易課税の業種区分の改正

簡易課税の業種区分表において、農業、林業、漁業については、第3業種とされています。

 

しかし、農業、林業、漁業を営む方が、令和元年10月1日以降に行う消費税の軽減税率8%が適用される飲食料品の売上については、第3種ではなく、第2種となります。

 

第3業種のままであると、消費税を多く納税する事となる為、注意しましょう。

 

 

 

簡易課税を選択すると2年間は強制適用 

簡易課税制度を一度選択した場合、必ず2年間はその継続が強制されます。

 

例えば、令和元年度に簡易課税を選択した場合、令和2年度も簡易課税による消費税の計算が強制されます。

 

 

簡易課税を取り止めたい場合

簡易課税方式を取り止め、原則方式による消費税の計算を行いたい場合、簡易課税を2年継続した後に、原則方式を希望する課税期間の前年度中に、簡易課税の取り止めの届出を行う必要があります。

 

例えば、令和元年度に簡易課税を選択した場合、令和2年度は簡易課税が強制適用されるため、令和3年度から原則方式の選択が可能です。

 

よって、前年度中である令和2年1月1日から令和2年12月31日までの間に、簡易課税の取り止めの届け出が必要です。

 

12/31が休みであっても、12/31まで取り止めの届け出が必要です。

 

 

多額の設備や修繕費が発生した時は、簡易課税が不利になることも

簡易課税制度適用している最中、多額の設備購入や修繕費の発生も予想されます。

これらの場合、簡易課税よりも、本来の原則方式により計算した方が、消費税が安くなることがあります。

 

◆ちょっとした例◆

税抜売上   1000万円 ・・・売上の消費税(10%)100万円

税抜仕入     600万円 ・・・仕入の消費税(10%) 60万円

税抜機械代金   300万円 ・・・機械の消費税(10%) 30万円

小売業を営んでいる        ・・・売上消費税の80%が仕入による消費税とみなされる

                  (売上消費税の20%が納税となる)

 

原則方式と簡易課税方式による納税額の差は、下記のモデルになります。

 

 

 

 

原則方式場合、消費税の納付は10万円となり、簡易課税の場合よりも原則方式の方が有利です。

 

また、簡易課税適用の方が不利となった場合、原則方式との納付差額は損失となります。

簡易課税適用や取り止めには期限に注意

多額の設備や修繕が事前に判明している場合、新たな事業年度開始の前日までに簡易課税の取り止めを届け出ないと、原則課税には戻れません。

 

個人事業主の場合、事業年度開始は1/1の為、取り止めの届け出期限は12/31です。

 

例え届け出期限が祝日や休日であっても、12/31までに届け出る必要があります。

簡易課税適用には事業計画を確認すること

簡易課税適用による損か?得か?という考え方は、結果論による部分が大きいです。

 

多額の設備の計画が無かったとしても、災害により設備の買換え、また多額の修繕費が発生した場合には、簡易課税の方が不利になる可能性があります。

 

しかし、将来の災害等については、予め予測が不可能です。

 

簡易課税適用に有利不利判定は、あくまでも現時点の状況でしか判断できない事を、念頭においておきましょう。

まとめ

原則方式を採用している事業者の方の場合、簡易課税制度の特例について一度検討してみた方がいいと思われます。

 

区分経理が難しく、また簡易課税の方が有利だと判定された場合、届け出た年かた適用されるため、大きなメリットがあるかもしれません。

 

なお、多額の設備や修繕費が発生した場合、簡易課税適用の方が不利になることもあり得ます。

 

簡易課税適用の際には、一度じっくり検討する事を心がけましょう。