個人事業主やフリーランスの家事関連費の計上時期と按分時期。

個人事業主やフリーランスの会計には、家事関連費という独特の経理があります。

 

主に自宅の電気代、家賃、電話代、ネット代の一部を、事業とプライベートに按分(以下、家事按分)し、事業部分を経費計上することです。

 

新規開業者の方からは、家事関連費はいつ経費計上し、家事按分すればいいのか、疑問に思う方も多いようです。

 

家事按分したら、最後に所得金額が大きくなってしまった。という方もいるようです。

 

今回は、個人の家事関連費の計上時期や按分時期について、ザックリ説明します。

 

 

 

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一般的な家事按分の時期と方法

通常、家事関連費の按分は、1月から12月までの処理が完了した後に行います。

 

棚卸処理や減価償却費計上など、いわゆる、決算修正処理で家事按分を行います。

 

例えば、賃貸マンションの一室(月額賃料100,000円)を業務の用に供する場合、毎月100,000円を地代家賃に計上します。

 

 

 

 

12月までの処理完了後、決算修正処理で、プライベート部分を地代家賃から事業主へ振替ます。

 

例えば、地代家賃年間1,200,000円(月額100,000円)の内、プライベート割合80%であれば、960,000円を事業主へ振替、経費から除外します。(1,200,000円×80%)

 

 

 

 

地代家賃の支払いは月々100%費用計上し、最後にプライベート部分だけ経費から除外するという方法が一般的です。

 

しかし、上記の方法の場合、1月から12月まで経費が過大に計上されています。

 

決算修正処理(家事按分処理)を行うことで、はじめてプライベート部分が経費から除外されるため、決算修正まで正しい所得を把握することができません。

 

 

 

 

 

12月までは納税が少なくて済むと思っていた所、家事按分を行ったことで、思った以上に所得が算出されたという方も少なくありません。

 

そこで、家事按分により影響が大きい支払いは、1月から12月までは、何ら経費計上しないという方法も賢い方法の1つです。

 

最後に事業割合部分だけを家事按分する方法

例えば、賃貸マンションの一室(月額賃料100,000円)を業務の用に供する場合、毎月100,000円の支払いは、事業主貸(地代家賃)として経理します。

 

月々の損益(収支)には反映させません。

 

 

 

 

 

 

必ず事業主貸に地代家賃の補助簿を作成し、事業主貸(地代家賃)と一目で把握できるようにしておきます。

 

そして1月から12月までの処理完了後、決算修正処理で、事業割合部分を事業主貸から地代家賃へ振替ます。

 

例えば、事業主貸(地代家賃)年間1,200,000円(月額100,000円)の内、事業割合20%であれば、240,000円を地代家賃へ振替ます。

 

 

 

 

 

 

地代家賃の支払いは、毎月100%事業主貸として処理を行い、最後に事業部分だけ経費計上する方法です。

 

1月から12月まで、地代家賃分だけ経費計上が過少ですが、最後に思った以上に所得が算出された!という事態を、回避することが可能な保守的な方法です。

 

地代家賃のように、影響が大きい家事関連費の場合、最後にプライベート部分を経費から除外すると、損益が大きく変化する傾向にあります。

 

その場合は、1月から12月までは経費計上せず、最後に事業部分のみ経費計上する方法も賢い方法の1つです。

 

事業割合部分だけを家事按分する時の注意事項

多くの会計ソフトには、家事按分の設定があります。

 

設定さえ適切に行えば、決算修正処理で自動で家事按分を行うことが可能です。

 

しかし、最後に事業部分のみ経費計上する場合、自身で計算し手入力する事になります。

 

家事按分を手作業で行う場合、単純な計算誤りに注意する必要があります。

 

例えば、事業割合20%・プライベート割合80%の場合、誤って事業割合80%としてしまう単純ミスは、意外な程多く散見されます。

 

手作業で家事按分を行う際は、細心の注意と見直し等が必要です。

 

根拠法令

所得税法第45条第1項第1号(必要経費とされない家事関連費)

所得税法施行令第96条(家事関連費)

まとめ

今回は家事関連費の計上時期や按分時期について、ザックリ説明しました。

 

最後にプライベート部分を経費から除外したら、所得が大きくなってしまった。という方は少なからずいるようです。

 

地代家賃はその支払金額は大きいものの、通常、事業割合はそれ程大きくありません。

 

可能な限り正しい所得を把握する為に、保守的な方法で会計処理する方法も1つの手段です。