減価償却資産の消費税の税込経理と税抜経理。経理方法で利益や所得が異なる。
消費税の納税義務者である個人や小規模法人の場合、税込経理が大多数です。
税抜経理よりも容易であり、税理士が関与しない方の場合、税込経理を採用する方が殆どです。
しかし、中には時々1,000万円以上の高額な減価償却資産を購入する方もいます。
高額な減価償却資産を購入した場合、税込 or 税抜により、その利益や所得金額が異なります。
今回は、高額な減価償却資産を購入した場合の税込経理と税抜経理の相違点について、ザックリ説明します。
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Contents・目次
減価償却資産は税込or税抜で所得や利益が異なる
税込経理を採用した場合、すべての課税取引は税込で表現されます。
納付すべき消費税額を租税公課に経費計上し、消費税分が経費になります。
一方、税抜経理の場合、全ての課税取引が税抜で表現されます。
税込 or 税抜経理いずれでも、課税取引が売上と経費のみの場合、最終的に利益や所得は変化しません。
【取引内容が売上高33,000,000円(税込)のみの場合】
しかし、減価償却資産を購入した場合、消費税の経理方法により利益や所得金額に差異が生じます。
減価償却資産は税込経理の場合は税込で、税抜経理の場合は税抜で表現されます。
税込経理の場合、減価償却資産に含まれる消費税額も含め減価償却するため、税抜経理より経費が減少します。
減価償却資産が高額になればなるほど、税抜経理と比べて経費が減少します。
以下、ザックリと本則課税と簡易課税に分けて、その相違を説明します。
【本則課税】税込経理・税抜経理の相違
【売上33,000,000円(税込) 機械11,000,000円(税込)耐用年数10年 定額法】
【消費税納税額 2,000,000円(3,000,000-1,000,000円)】
上記例を損益計算書で表現すると、以下の通りです。
上記の通り、税込経理と税抜経理では、利益や所得金額に差が生じます。
税込経理の場合、減価償却資産に含まれる消費税額1,000,000円も含めて減価償却します。
資産取得時の消費税相当額の減価償却費は、100,000円です。(1,000,000×0.1)
一方、税抜経理場合、減価償却資産に含まれる消費税額1,000,000円は、全額資産取得年の経費になります。
上記の場合、減価償却分の差額900,000円について、利益所得金額に差が生じます。
【簡易課税】税込経理・税抜経理の相違
【売上33,000,000円(税込) 機械11,000,000円(税込)耐用年数10年 定額法】
【消費税納税額 簡易第5種 1,500,000円(3,000,000×50%)】
【税抜経理 雑収入 2,000,000(本則納税額)-1,500,000円(簡易納税額)】
上記例を損益計算書で表現すると、以下の通りです。
上記の通り、簡易課税においても利益所得金額に差が生じます。
その差額が生じる理由は、本則課税の場合と同様です。
簡易課税の場合、税込経理を採用する方が殆どです。
売上の消費税のみ適正に捉えればよいため、わざわざ税抜経理を採用する意味がありません。
しかし、本則課税の場合と同額の利益所得額の違いが生じます。
簡易課税適用時に高額な固定資産を取得する場合もあります。
そのような場合は、税抜経理を検討する余地が大いにあります。
減価償却資産は税込or税抜で所得や利益が異なる
個人や小規模な法人の場合、税込経理を採用することが殆どです。
固定資産の購入が無い場合、消費税の経理方法で利益所得金額に差が生じることはありません。
しかし、固定資産の取得時は、前述の通り、経理方法により利益所得金額が異なります。
数百万程度であれば、大きな差は生じません。
しかし、1,000万円、2,000万円を超える資産の取得時、税込経理の場合はその利益所得金額に大きな差が生じます。
売上高が1億円近い法人でも、税込経理を採用する納税者をよく目にします。
節税という論点を考慮する場合、高額な減価償却資産の購入時は消費税の経理方法により、利益所得金額に差が生じることを念頭をおく必要があります。
まとめ
今回は、高額な減価償却資産を購入した場合の、税込経理と税抜経理の相違点について、ザックリ説明しました。
個人事業主でも、10,000,000円を超える減価償却資産を取得する方が時々目にします。
個人の方の場合、税込経理を採用する方が殆どです。
しかし、高額な減価償却資産を購入時、節税を考慮するのであれば、税抜経理を検討する方法も節税につながります。
その一方で、税抜経理の方が事務上の負担が増すことは事実です。
経理上の手間と税抜経理による節税を鑑み、検討してもベターだと考えます。