本則課税の個人事業主の業務用車両の下取りと消費税の確定申告。

車両を保有する個人事業主には、しばしば車両の下取りが発生します。

 

下取り価格は業務用固定資産の譲渡所得となり、更に消費税の課税対象です。

 

自身で確定申告を行う場合、特に税抜経理を採用する方は、申告方法に悩む方も多いようです。

 

今回は、本則課税の個人の業務用車両の下取りと消費税の確定申告について、ザックリ説明します。

 

ここでは本則課税を前提としています。

 

 

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業務用固定資産の売却は所得税も消費税も課税される

個人事業主が事業用資産を売却した場合、所得税と消費税が課税されます。

 

例えば、自宅兼店舗の売却や車両の下取りが該当します。

 

特に車両の下取りは、車両の買替時によく目にします。

 

下取りはその車両の時価相当額を、新車両の支払代金から差引く行為です。

 

従前車両を時価で売却し、その売却代金を新車両の支払いに充当することと同様です。

 

よって、下取価格が売却収入であり、消費税の課税対象です。

 

事業割合を設定している場合、下取価格に事業割合を乗じた金額が、消費税の課税対象です。

 

 

 

 

そして、下取価格と売却直前の車両簿価の差額が譲渡所得となります。

 

事業割合を設定している場合、下取価格と車両簿価の差額に事業割合を乗じた金額が譲渡所得です。

 

 

 

 

自身で確定申告を行う方の場合、非常に漏らしやすい論点です。

 

下取車両の譲渡所得が譲渡損失となり、結果的に所得税に影響がないこともあります。

 

しかし、消費税は下取価格に対して課税されます。

 

課税事業者の場合、即座に消費税の課税もれとなるため、正しい経理と理解が必要です。

 

以下、業務用車両の下取りがあった場合の経理とその申告について説明します。

 

ここでは、売上高・収入は車両の下取りのみとし、仕入・経費は一切無いものと仮定して消費税の計算をします。

 

税抜経理の場合の消費税・所得税の申告

【下取車両】

取得費:6,000,000円 減価償却費累計:5,000,000円 → 簿価:1,000,000円 

事業割合 50%

下取価格:3,300,000円(税込)(内、消費税300,000円)

 

税抜経理の場合、以下が仕訳の一例です。

 

経理のポイントは2つです。

 

1つ目は、税抜下取価格は譲渡収入のため、事業主を使い事業所得から分離することです。

 

個人事業主の場合、車両売却損益といった会計仕訳が発生することはありません。

 

2つ目は、下取消費税300,000円を、仮受消費税として消費税を発生させることです。

 

上記は事業割合50%のため、仮受消費税を150,000円発生させます。

 

 

 

 

結果的に、消費税の納税額が150,000円になるように、消費税の申告書を作成します。

(ここでは売上高・収入は車両の下取りのみ、仕入・経費ないものとしています。)

 

消費税の申告書(e-tax等)では、業務用固定資産の譲渡収入欄にチェックをします。

 

 

 

 

 

 

事業所得の他に、業務用固定資産の譲渡所得を入力できるようになりました。

 

 

 

 

 

収入金額に税抜の下取価格、仮受消費税の金額をそれぞれ入力します。

 

注意点は、事業割合50%を乗じた後の金額をそれぞれ入力します。

 

 

 

 

この一連の流れを正確に行うことで、消費税が正しく計算されます。

 

作成された課税取引計算書において、下取りに含まれる消費税が正しく計算されています。

 

(4)業務用固定資産の譲渡所得の部分で税抜で表現されています。

 

 

 

最終的な消費税申告書の納税額も適正額が計算されています。

 

 

 

 

最後に消費税の納税額と仮受消費税の相殺仕訳を行い、会計処理も完了します。

 

 

 

 

会計処理を消費税適正に経理し、そして消費税申告書作成の際に下取価格の入力を漏らさないことが重要です。

 

そして、所得税の申告では、総合譲渡の明細書を作成し譲渡所得を計算します。

 

税抜経理のため下取価格も税抜で記載し、更に事業割合50%を乗じ譲渡所得を算出します。

 

 

 

 

総合譲渡明細から所得税確定申告書1表に表現され、譲渡所得を処理して完了です。

 

税込経理の場合の消費税・所得税の申告

【下取車両】

取得費:6,000,000円 減価償却費累計:5,000,000円 → 簿価:1,000,000円 

事業割合 50%

下取価格:3,300,000円(税込)(内、消費税300,000円)

 

税込経理の場合、以下が仕訳の一例です。

 

経理のポイントは2つです。

 

1つ目は、税抜経理と同様、税込下取価格は譲渡収入のため、事業主を使い事業所得から分離することです。

 

2つ目は、税込下取り価格の全額を事業主とすることです。

 

仮受消費税が発生しないため、事業割合していても、下取り価格全額を事業主にします。

 

 

 

 

結果的に、消費税の納税額が150,000円になるように、消費税の申告書を作成します。

(ここでは売上高・収入は車両の下取りのみ、仕入・経費ないものとしています。)

 

消費税の申告書(e-tax等)では、業務用固定資産の譲渡収入欄にチェックをします。

 

 

 

 

 

 

事業所得の他に、業務用固定資産の譲渡所得を入力できるようになりました。

 

 

 

 

 

収入金額に税込の下取価格、仮受消費税の金額をそれぞれ入力します。

 

注意点は、事業割合50%を乗じた後の金額をそれぞれ入力します。

 

 

 

 

この一連の流れを正確に行うことで、消費税が正しく計算されます。

 

作成された課税取引計算書において、下取りに含まれる消費税が正しく計算されています。

 

(4)業務用固定資産の譲渡所得の部分で税込で表現されています。

 

 

 

 

最終的な消費税申告書の納税額も適正額が計算されています。

 

 

 

 

最後に消費税の納税額を費用計上し、会計処理も完了します。

 

消費税は未払計上せず、実際に納付した時に租税公課と処理しても問題ありません。

 

 

 

 

そして、所得税の申告では、総合譲渡の明細書を作成し譲渡所得を計算します。

 

税込経理のため下取価格も税込で記載し、更に事業割合50%を乗じ、譲渡所得を算出します。

 

 

 

 

総合譲渡明細から所得税確定申告書1表に表現され、譲渡所得を処理して完了です。

 

事業売上が900万超の場合は課税事業者になることも

免税事業者の場合、下取り価格を加算すると、消費税の課税事業者になる場合があります。

 

事業の売上が900万円を超えているような場合です。

 

下取り価格を課税取引に含めることを漏らした場合、本来は消費税の課税事業者に該当することもあり得ます。

 

後から調査等で指摘・発覚することもあり得ます。

 

また、自宅兼店舗・事務所や機械も、業務用固定資産の譲渡になります。

 

自身で確定申告を行う個人事業主は、非常に漏らしやす傾向があります。

 

後々困らないために、確実に課税対象として正しく申告する必要があります。

 

根拠法令

消費税法第2条第1項第8号(定義)

消費税法基本通達5-1-1(事業としての意義)

消費税法基本通達5-1-7(付随行為)

まとめ

今回は、本則課税を採用する個人の業務用車両の下取りと消費税の確定申告について、ザックリ説明しました。

 

税抜経理を行う事業者の場合、会計処理がわからない方も多いようです。

 

また、更に消費税や所得税の課税対象になることも知らない方もいます。

 

漏らした場合は消費税の課税もれになるため、車両の下取り時は正しく処理が行われているか注意する必要があります。