外注費と給与は働き方の実態が判断基準。実態で判断する外注費と給与の違いについて。
コロナ渦以降、働き方の幅が広がり、請負・業務委託契約(以下、請負契約等)により、個人に仕事を依頼する事業者(個人 or 法人)が増加しています。
社員として雇用を止め、個人と請負契約等を結び、外注費を支払う流れです。
しかし、例え請負契約等を交わしても、雇用契約と変化がない場合、外注費は認められません。
安易に下請けに外注費を支払うと、給与と認定され問題になることがあります。
今回は外注費に関する注意事項、外注費と給与の実態と判断基準についてザックリ説明します。
なお、ここでは個人に対する外注費を前提としています。

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Contents・目次
外注費か給与か問題になることが多い
事業者が個人に外注費を支払う場合、しばしば、給与 or 外注費か問題になります。
事業者が外注に業務を依頼する場合、個人と請負契約等を結びます。
フリーランスが業務を受注したり、ひとり親方が下請けに出すようなイメージです。
通常は、業務用委託契約書や請負契約書を作成し、その形式を整えておきます。
特に問題になりやすい事例は、ひとり親方が下請けに外注を出す場合です。
独立後間もないひとり親方の場合、契約書等を一切作成せずに、安易に外注費とする方が多い傾向にあります。
しかし、給与 or 外注費は、納税者自身が判断するのではありません。
形式的な契約書や、外注先のその働き方の実態により判断します。
外注費として支払った場合でも、実態が雇用契約であれば給与とされます。
一方で、給与 or 外注費の相違は、明確に法令による定義はありません。
その実態は千差万別であり、正確に判断することは困難です。
外注費は成果物の引き渡しがある。給与は労働の提供と説明されても、言葉一つで判断することは容易ではありません。
そこで外注費を支払う際は、給与に該当しないことを客観的に示すことが肝要です。
税務調査に備えるためにも、外注費の基本的・常識的な考え方を知る必要があります。
外注費・給与の判断は、形式的・実質的な事実を総合的に勘案して判断します。
特に契約書がない場合は、その実態を総合的に判断することになります。
外注費と認識されやすい働き方の実態
契約書・請求書の作成がない場合、以下複数の実態を総合的に勘案すると、外注費と考えられる可能性があります。(法令明記はなく、あくまでも可能性です。)
以下、ひとり親方が外注に仕事を依頼するパターンを想定しています。
【①契約書の作成】
親方 VS 外注費間の契約書作成がなく、外注先から親方に対し請求書の発行もなし。
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【➁報酬の支払契約内容】
報酬は業務完了・完成時に一括支払い。(例:1完成品につき〇〇円)
天災・事故・不可抗力等は発生時も、完成品の引き渡しがないと報酬の支払いなし。
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【③時間的拘束】
親方 vs 外注先間の労働時間・日数の取り決めなし。(外注先は自身の裁量で業務遂行。)
報酬は1完成品あたり〇〇円につき、外注先が要した労働時間は報酬に影響しない。
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【④補助者の利用】
外注先が体調不良等により業務ができない場合、外注先自ら他者に外注依頼。
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【⑤責任の所在】
外注先に遅延や破損があり、親方が元請先から金銭負担を要求された場合、遅延・破損を発生させた外注先が金銭負担を行う。
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上記の場合、契約書や請求書の発行がないものの、外注先の業務の完成・結果をもって、報酬の支払いが行われます。(①と➁)
また、外注先は親方と完全に独立しており、互いに従属関係はありません。(③)
更には外注先自身で事業の危険性を負担しています。(④と⑤)
よって、親方と下請先の関係は、業務委託・請負契約(外注費)と考えられる可能性があります。
給与と認識されやすい働き方の実態
契約書・請求書の作成がない場合、以下複数の実態を総合的に勘案すると、給与と考えられる可能性があります。(法令明記はなく、あくまでも可能性です。)
【①契約書の作成】
親方 VS 外注費間の契約書作成がなく、外注先から親方に対し請求書の発行もなし。
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【➁報酬の支払契約内容】
報酬は日給 or 時給ベースで所定日に支払い。
天災・事故・不可抗力等は発生時も、、労働日数 or 労働時間に基づく報酬の支払いあり。
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【③時間的拘束】
親方 vs 外注先間の労働時間・日数の取り決めあり、休暇時は親方の許可要。
早退、時間超過、休暇による報酬の増減があり。
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【④補助者の利用】
外注先が体調不良等により業務ができない場合、親方が他者に外注依頼。
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【⑤責任の所在】
外注先に遅延や破損があり、親方が元請先から金銭負担を要求された場合、親方が金銭負担を行う。
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上記の場合、契約書や請求書の発行がなく、外注先の労働実績に基づき報酬の支払いが行われます。(①と➁)
また、外注先は親方と完全に独立しており、互いに従属関係があります。(③)
更には、外注先自身で事業の危険性を負担することはありません。(④と⑤)
よって、親方と下請けの関係性は、雇用関係(給与)と考えられる可能性があります。
外注費が給与と認識された場合の税務リスク
前述の内容は、よくあるわかりやすい一例に過ぎません。
実際は、前述の働き方の実態に加え、その他複数の実態を総合的に勘案し、最終的に外注費か給与か判断します。
そして、外注費が給与認定された場合、以下のような税務リスクが生じます。
具体的には、消費税額に多大な影響が生じます。
例えば、売上11,000,000円(税込)、経費4,400,000円(税込)の場合、経費が外注費 or 給与のいずれかにより、納付する消費税額が異なります。
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更に外注費が給与認定された場合、源泉所得税の納付も必要になります。
過去数年間に遡って認定された場合は、相当な金額になることも考えられます。
給与と認識されない実態を整えておく
外注費を支払う場合は、安易に外注費として支出してはいけません。
給与認定された場合、大きなダメージとなる可能性があります。
そのためには、まず形式的条件として、契約書を作成することです。
外注先は元受け先に対し、請求根拠を明記した請求書を発行します。
一方で、外注費として根拠を明示することは容易ではありません。
そこで、給与認定されないための実態を整えておくことです。
前述までに列挙した考え方は、実際はそれ程難しい内容ではありません。
外注費(請負契約)の実態、または給与(雇用契約)の実態を鑑みた場合、ごくごく自然で常識的な考え方です。
下請け先に外注費を考える場合、まずは給与認定されないための実態を整えることが肝要です。
そして、相手先の事情を考慮して、雇用契約が望ましいのであれば。雇用契約を交わして給与として支給する方法が正当な処理だと考えます。
また、その実態が雇用契約であれば、給与として正当に支給すべきです。
上記を総合的に勘案して、最終的に給与かどうか判断する傾向があります。
根拠法令
消費税法基本通達1-1-1(個人事業者と給与所得者の区分)
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)
まとめ
今回は、外注費と給与の判断基準について、ざっくり説明しました。
契約書・請求書の有無の形式面をはじめとして、外注の働き方といった実態を総合的に勘案し、外注か給与か判断をする必要があります。
個人事業主の場合、安易に外注費として支出してしまいがちです。
後々問題にならないためには、給与と認定されない根拠を整理しておく必要があります。
