所得税の累進課税制度の仕組み。超過累進課税と単純累進課税の違いを正確に理解しよう。
日本の所得税は累進課税制度であり、所得が多くなればなる程、所得税率が高くなります。
累進課税制度自体は多くの方が認識していますが、その仕組みを正確に理解している人は多くありません。
社会人であっても、日本の所得税の累進課税制度を知らない方が大勢います。
日本の所得税は単純累進課税ではなく、超過累進課税です。
所得が多くなればなる程、所得税率が高くなるわけではありません。
一定の所得金額を超過した部分につき、所得税率が上がります。
今回は、所得税の超過累進課税について、ザックリ説明します。
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単純累進課税と超過累進課税の違い
累進課税制度には、単純累進課税と超過累進課税という考え方があります。
いずれも課税所得(税率が掛けられる数)が増加すると、税率も伴って上昇します。
その相違点は、単純累進課税の場合、上昇した税率は課税所得全体に乗じられます。
一方、超過累進課税の場合、課税所得が一定ラインを超えた場合、その超えた部分に対し税率が上昇します。
日本の所得税は後者の超過累進課税制度が採用されています。
課税所得が一定ラインを超えるごとに、所得税率が上昇します。
現在の日本の所得税率は、下記の税率が設定されています。
最も低い税率は、課税所得が195万円までは5%です。
一方最も高い税率は、課税所得が4,000万円を超えた場合が45%になります。
以下、所得税の超過累進課税の計算方法について、具体的に説明します。
超過累進課税による具体的な所得税額計算
課税所得が350万円の場合、適用される所得税率は以下の通りです。
課税所得が195万円までは5%、195万円超から330万までは10%、330万円超部分は20%です。
課税所得が350万の場合、超過累進税率は20%ですが、課税所得の全体に対して20%ではありません。
日本の所得税は超過累進課税ですので、195万円、330万円を超えるごとに税率が上昇します。
課税所得350万円の場合、所得税額は272,500円です。
具体的な所得税額の算出過程は以下の通りです。
上記により、一定の課税所得を超えた部分につき、所得税率が上昇することがわかります。
もしも単純累進課税の場合、上記の所得税額は、700,000円(3,500,000円×20%)です。
課税所得が大きくなった場合、課税所得の全体に対し、税率を乗ずると考えている方は少なくありません。
しかし、日本の所得税率は、一定のラインを超えた部分につき、税率が上昇していきます。
超過累進課税の特徴を理解し、日本の所得税の計算過程をしっかり把握しておきましょう。
根拠法令
所得税法第89条(税率)
まとめ
今回は所得税の超過累進課税について、ザックリ説明しました。
所得は増えれば増える程、税率が上がっていくと考える方は少なくありません。
しかし、税率が上昇する部分は、課税所得の内、一定ラインを超えた部分だけです。
意外にも、超過累進課税を把握していない方は多い傾向があります。
ご自身で確定申告を行う時は、所得税の計算過程をしっかり把握しておきましょう。