特定口座の株式譲渡損失や繰越損失の確定申告。国保等や税金に影響が生じるパターンについて。
令和5年分の確定申告より、配当・株式譲渡の市民税申告不要制度が廃止されました。
株式運用を行う方の中には、申告するべきか否か悩む方も多いようです。
譲渡損失や過去の繰越損失がある場合、確定申告をすべきか迷いがちです。
確定申告をすると、国保や介護保険料、後期高齢者料(以下、国保等)に影響するからです。
今回は、特定口座の株式譲渡損失や繰越損失の確定申告による、国保等や税金に影響が生じるパターンについて、ざっくり説明します。
なお、ここではざっくりした判断材料として、影響が生じるパターンのみ説明しています。
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Contents・目次
複数の特定口座で譲渡利益と譲渡損失を損益通算する場合
複数の特定口座を有し、一方で譲渡損失、一方で譲渡利益が生じることがあります。
このような場合、申告分離課税(以下、第3表)による確定申告で、譲渡利益と譲渡損失の相殺(以下、損益通算)が可能です。
相殺された譲渡利益は無かったこととなり、源泉徴収された所得税・市民税が還付されます。
損益通算後も譲渡損失が残る時、即ち、譲渡損失の方が大きい時は、国保等に影響しません。
しかし、譲渡利益の方が大きい時は、国保等が必ず増加します。
なお、譲渡利益の方が大きい時でも、所得税や市民税は増加しません。
元々、譲渡利益から所得税15.315%と市民税5%が源泉徴収されています。
申告分離課税により確定申告しても、所得税15.315%と市民税5%に変わりないからです。
複数の特定口座で譲渡損失と配当金を損益通算する場合
複数の特定口座を有し、一方で譲渡損失が生じ、一方で配当金を受け取る場合があります。
このような場合、申告分離課税による確定申告で、配当金と譲渡損失の相殺(以下、損益通算)が可能です。
(※一般口座で受領した上場株式等の配当金がある場合も、損益通算可能です。)
相殺された配当金は無かったこととなり、源泉徴収された所得税・市民税が還付されます。
損益通算後も譲渡損失が残る時、即ち、譲渡損失の方が大きい時は、国保等に影響しません。
しかし、配当金の方が大きい場合は、国保等が必ず増加します。
なお、配当金の方が大きい場合でも、所得税や市民税は増加しません。
元々、配当金から所得税15.315%と市民税5%が源泉徴収されています。
申告分離課税により確定申告しても、所得税15.315%と市民税5%に変わりないからです。
過去の株式繰越損失と譲渡益・配当金を繰越控除する場合
過去3年内に生じた株式繰越損失がある場合、申告分離課税による確定申告で、繰越損失と配当金・譲渡利益を相殺(以下、繰越控除)することが可能です。
相殺された譲渡利益・配当金は無かったこととなり、源泉徴収された所得税・市民税が還付されます。
繰越控除後も繰越損失が残る場合、即ち、繰越損失の方が大きい時は、国保健康保険料・後期高齢者保険料に影響しません。
ただし、65歳以上からの介護保険料の金額(等級)に影響します。
また、扶養の判定となる所得にも影響します。
一方、譲渡利益・配当金の方が大きい時は、国保等が必ず増加します。
なお、譲渡利益・配当金の方が大きい場合でも、所得税や市民税は増加しません。
元々、譲渡利益や配当金から、所得税15.315%と市民税5%が源泉徴収されています。
申告分離課税により確定申告しても、所得税15.315%と市民税5%に変わりないからです。
根拠法令
租税特別措置法 第8条の4 (上場株式等に係る配当所得等の課税の特例)
地方税法第32条第13項、15項(所得割の課税標準)
地方税法第313条第13項、15項(所得割の課税標準)
まとめ
しばしば迷いがちな、特定口座の申告による影響を、ザックリ説明しました。
株式譲渡損失や繰越損失が残る場合は、国民健康保険料に影響はありません。
マイナスが残らないのであれば、確定申告をしないという方法もベターかもしれません。
しかし、株式譲渡損失の繰越控除を適用する場合、65歳以上の介護保険料や、扶養の所得の判定に影響を及ぼします。
上記をざっくりと覚えておき、実際の確定申告の際、自分で電卓をはじき、シミュレーションするに事が最も大切です。
株式譲渡や配当金の確定申告は、申告することで、1年間のトータルの税金がどう変化するか、理解することが肝要です。