被合併法人が過去の適格合併により引継いだ欠損金の引継制限
中小法人の間では、しばしば親会社と子会社の合併が実施されます。
オーナー株主100%グループ内の場合、容易に適格要件を満たし、欠損金も引き継がれます。
しかし、中小法人の場合、短期間(5年の間)に合併を繰り返す事も。
特に、被合併法人(子会社)が適格合併を繰り返した場合、欠損金の引継ぎは注意すべき点があります。
今回は、被合併法人が過去、適格合併により引継いだ欠損金の引継ぎ制限について、ざっくり説明します。
(以下、共同事業の再編に該当しない合併を前提としています。)
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Contents・目次
子会社(被合併法人)が合併を繰り返す場合は注意
親会社(合併法人)が100%出資した子会社(被合併法人)と適格合併をする場合、通常は欠損金の引継ぎ・使用制限はありません。
子会社は設立日から、親会社と完全支配関係が継続しているからです。
しかし、合併事業年度開始日前5年以内に、子会社(被合併法人)が設立された場合は注意が必要です。
その場合、子会社の欠損金の発生原因を見直す必要があります。
具体的には、子会社が過去、適格合併により欠損金を引き継いでいる場合です。
上記の場合、子会社の欠損金の発生原因別に欠損金の引継ぎ制限があります。
被合併法人が適格合併を繰り返す場合とは
中小法人のグループ内では、下記のように短期間な適格合併を繰り返す事があります。
・12月法人。
・親会社(合併法人)=A社
・親会社が買収した法人=B社
・子会社(被合併法人)=C社
・平成31年1月 A社がB社株式を100%取得(買収)
・令和2年1月 A社がC社を100%出資で設立
・令和3年1月 B社(消滅)とC社(存続)が合併
・令和4年1月 A社とC社が合併
A社がB法人を100%買収(欠損金あり)し、その後、100%子会社のC法人を設立します。
更にB社とC社が合併し、B社の欠損金をC社に引き継ぎます。
その後、A社とC社が合併し、C社の欠損金をA社に引き継ぎます。
A社がC社から引き継ぐ欠損金には、元々B社が保有していた部分が含まれています。
上記一連の再編が、5年以内に行われる場合、A社がC社から引き継ぐ欠損金は、引継ぎ制限を受ける事になります。
B社とC社の合併に伴う欠損金引継ぎ制限
A社が100%株式を保有するB社とC社間は、100%完全支配関係が生じています。
B社とC社の合併は適格合併に該当し、B社の欠損金はC社に引き継がれます。
B社とC社の間には、5年超の支配関係は生じていません。
しかし、合併事業年度開始日5年前の日、B社設立日、C社設立日のうち、最も後の日付であるC社設立日からB社とC社との間には支配関係が継続しています。
よって、B社の欠損金はC社に引き継がれ、引継ぎ制限や使用制限はありません。
A社とC社の合併に伴う欠損金引継ぎ制限
A社とB社間には、100%完全支配関係が生じています。
また、合併事業年度開始日5年前の日、A社設立日、C社設立日のうち、最も後の日付であるC社設立日からA社とC社間に、支配関係が継続しています。
A社とC社の合併は適格合併に該当し、通常、C社の欠損金はA社に引き継がれます。
しかし、C社が過去、適格合併を行っていた場合、下記の事項に該当すると、欠損金の引継ぎ制限を受けます。
・C社が合併事業年度前5年以内に設立されている
・C社が過去、合併したB社とA社間に5年超の支配関係がない
C社は適格合併により、B社の欠損金を引き継いでいます。
よって、A社とB社の支配関係が5年継続していない場合、C社が保有する欠損金の内、B社から引き継いだ欠損金について引継ぎ制限を受けます。
制限を受ける金額は、元々B社が保有していた欠損金の内、A社との支配関係前(平成30年12月以前)に発生した欠損金額です。
上記の規定により、意図的に欠損法人を買収し、欠損金を持ち込む短期間の合併は制限されます。
A社がB社との支配感関係前(買収前)に持ち込んだ欠損金について、引継ぎ制限を受けます。
根拠法令
法人税法第57条第3項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)
法人税法施行令112第4項(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)
法人税法施行令112第9項(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)
法人税法施行令113(引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例)
まとめ
親会社と子会社が5年以内の短期間に適格合併を繰り返す場合、子会社が過去、適格合併より欠損金を引き継いでいる場合は、注意が必要です。
合併事業年度前5年以内に一連の再編が行われている場合、欠損金を引継ぎ制限や合併法人が有する欠損金の使用制限を受けます。
100%グループ内の再編であっても、5年間以内に大きな動きがある場合は、必ず当初の再編まで遡って判断する必要があります。