株式譲渡や配当金の確定申告は市民税の申告不要制度(異なる課税方式の選択)が必須。

株式の配当金収入がある方は、所得税の確定申告で配当の申告を行い、配当控除の適用を受ける方が少なくありません。

 

配当を含めた課税所得が900万円未満の場合、配当控除の適用により、最終的な所得税の納税額が減少する傾向にあります。

 

ただし、配当の申告を行う場合、市民税の「配当金は確定申告不要手続き」を失念している方がいるようです。

 

そもそも「市民税の配当金の確定申告不要手続き」を知らない方も。

 

市民税の配当金申告不要制度が明文化されて数年経過しますが、改めてその内容について、ザックリ説明します。

 

 

 

all paints by Ryusuke Endo

 

配当金は確定申告すると所得税が少なくなる

個人が上場株式等の配当収入(以下、配当金)を得る場合、通常は配当受領時に、15%の所得税(復興税除く)が源泉徴収され、確定申告は原則不要です。

 

ただし、配当金の源泉徴収税率は一律15%です。

 

納税者の所得税率が5%から20%の場合、配当の確定申告を行い配当控除を適用した方が、有利だと言われています。

 

例えば、所得税率が5%の場合、申告不要の配当の確定申告する事で、差額の10%分(15%-5%)が戻る結果となります。

 

 

 

 

 

 

また、申告する配当金の10%相当額を、所得税額から直接減らす事ができます。

 

例えば、事業所得2,000,000円、配当所得300,000円(源泉所得税45,945円)の場合、配当の申告の有無により、最終的な納税額は下記の様に通り試算できます。

 

所得税の計算においては、配当金の申告を行った方が納税額が少なくなります。

 

 

 

 

配当金を申告すると国保、高齢者保険、市民税、医療費が増加する

しかし、配当の申告は、配当所得の金額分だけ所得金額が増加させます。

 

個人事業主やフリーランス、年金所得者の場合、所得金額の増加により、国民健康保険、後期高齢者保険、介護保険料、個人市民税の金額が、確実に増加します。

 

また、高齢者の場合は市民税課税所得増加により、医療費負担割合が増加する事もあります。

 

配当金の申告により所得税額は減少しても、結果的に、国保や高齢者・介護保険、市民税の金額が増加します。

 

また、高齢者の方の場合は所得条件により、医療費の負担割合が2割、3割になってしまうこともあります。

 

 

 

 

 

 

例えば、事業所得2,000,000円、配当所得300,000円(源泉所得税45,945円)の場合、配当の申告の有無により、国保や市民税の金額は、下記の様に変動します。

 

 

 

(※所得控除は基礎控除のみ、草津市の国保(39歳以下の場合)を想定しています。)

 

配当の申告の有無により、単純に所得税額の比較では配当金を申告した方が有利です。

 

しかし、国保や市民税の増加を加味すると、その有利な金額の差は減少します。

 

高齢者の場合、配当の申告により医療費負担割合が増加すると、トータルで大きなマイナスになる事も考えられます。

 

そこで数年前より、「所得税の確定申告で上場株式等の配当金を申告する」、「市民税の確定申告で上場株式等の配当金を申告しない」といった、所得税と市民税で異なる課税方式の採用が可能となりました。

 

この制度により、配当金(また株式譲渡所得)の申告により、国民健康保険、後期高齢者保険、介護保険料、個人市民税、医療費負担割合の増加を防ぐことが可能となりました。

 

上場株式等の市民税の申告不要制度(異なる課税方式選択用)

配当の申告を所得税の確定申告で行い、市民税で申告不要制度を採用する場合、市役所に申告不要の付表を提出します。

(※申告不要の不要は、各市町村異なります。)

 

滋賀県草津市の場合、下記の書類に「市民税では全額申告しません。」にチェックを入れます。

 

株式譲渡所得があり、市民税で申告不要とする場合も同様です。

 

 

 

 

上記の付表により、所得税では配当を申告し、市民税では申告不要制度を採用する事ができます。

 

この手続きにより、市民税課税所得が判定要素となる、国保、高齢者保険、介護保険、個人市民税、医療費負担割合の増加を抑制することができます。

 

上記の付表とともに、申告不要制度を採用した場合の市民税の申告書を別途作成し、付表とともに提出をします。

 

一般的には、特定口座年間取引計算書、配当金計算書などを添付します。

 

しかし、所得税の確定申告書の添付や繰越損失の付表、青色決算書などを添付するなど、市役所により必要資料や対応は異なります。

 

添付書類は、一度お住まいの役所に確認をする必要があります。

 

注意事項

・上場株式等の譲渡所得についても、同様に市民税で申告不要を選択する事が可能です。

(※医療費負担割合の増加を回避する事ができます。)

 

・非上場株式の配当金(源泉所得税率20%)は、所得税の配当控除の適用がありますが、市民税の申告不要制度はありません。(※必ず確定申告が必要です。)

 

・市民税で申告不要の意思表示は、市民税の納付書が届くときまでに必ず行う必要があります。

 

・所得税の確定申告で、上場株式等の譲渡損失の申告をし、市県民税で申告をしないことを選択した場合、翌年度以降の市県民税の算定で、譲渡損失の繰越控除を適用することができません。

 

・市民税の確定申告書は各市町村のHPより自動計算で作成し、必ず誤りはないことを確認しましょう。

根拠法令

租税特別措置法第37条の10(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)

租税特別措置法第37条の11(一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例)

租税特別措置法第37の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)

地方税法第32条第13項、15項(所得割の課税標準)

地方税法第313条第13項、15項(所得割の課税標準)

地方税法第第314条の9(配当割額又は株式等譲渡所得割額の控除)

まとめ

今回は、上場株式等に係る市民税の申告不要税度(所得税と市民税で異なる課税方式の選択)について、ザックリ説明しました。

 

株式配当金や譲渡所得がある方で、またこの制度を知らない方や、知っていてもよくわからない方もいるようです。

 

配当金等申告により国保等、市民税、医療費負担割合を確実に抑制する事が可能であるため、所得税の確定申告をする際には、必ず手続きを忘れずに行いましょう。