LGBTの円満遺産分割は親族とのコミュニケーションがポイント。お互いの親族と関係性と理解を深めるところからはじめよう。
この10年程で、LGBTという言葉が広まりました。
同性パートナーと生涯を共にする方が増えた一方、税制は未だに追いついてません。
同性パートナーがお互いに年齢を重ねた後、必ず直面する親族との遺産分割問題。
民法上の配偶者や相続人ではない同性パートナーは、その親族とトラブルになることが容易に想像できます。
親族とのトラブルを避ける対策や、遺産分割をスムーズに進める対策はただ1つだけ。
同性パートナーとお互いの親族間で、異性間カップルと何ら変わらない、家族同然のコミュニケーションをとることです。
以下、ゲイとして相方と13年共にしている僕の税理士目線による意見をザックリ投稿します。
all paints by RYUSUKE ENDO
同性パートナーに財産を残す方法
同性パートナーが死亡した場合、何もしなければ、パートナーに財産を残すことは不可能です。
民法上の相続人ではない同性パートナーに相続権はありません。
財産を残すために一般的に考えられる方法は、以下の通りです。
①遺言の作成(公正証書や自筆証書)
②死因贈与(口頭やメモ)
③信託契約
④生命保険金受取人指定
⑤養子縁組
同性パートナーは相続人ではないため、遺言等により、パートナーに財産を残す意思表示が必要です。
またお互いに生命保険契約や信託契約(ある種の遺言)を交わし、財産を残すことも可能です。
養子縁組をすると親子関係となり、民法上の相続人になることもできます。
人生を共にしても、現行の法令上、同性パートナーはお互いにその意思表示をする他ありません。
しかし、パートナーに財産を残すことと実際の遺産分割は全く別物です。
遺産を残すポピュラーな方法は遺言ですが遺言書を作成しても、LGBT間の遺産分割は、起こり得るトラブルを容易に想像することができます。
遺留分侵害額請求権の問題
パートナーの両親が存命の場合、その両親には遺留分があります。
例えば、パートナー死亡時、その両親2名が存命であれば、両親の遺留分はそれぞれ1/6ずつです。
パートナーの遺言により、その全遺産を受け取ったとしても、両親はそれぞれ全財産の1/6を請求する権利(以下、遺留分侵害額請求権)があります。
パートナーに財産の残す方法として、遺言(公正証書遺言)は非常に有効な方法です。
しかし、遺言によりパートナーに全財産の受け取りを指定しても、遺留分侵害額請求から逃れる事ができません。
そして2019年7月以降、請求された遺留分は、金銭で返還する必要があります。
遺留分侵害額請求をされた場合、財産を金銭で返還しなくてはなりません。
遺言等を残す場合、遺留分を加味しておく方がベターです。
なお、相続人が兄弟姉妹のみの場合、兄弟姉妹に遺留分はありません。
また生命保険金は遺留分の対象となる資産から除かれます。
遺言や死因贈与の問題
パートナーの相続人がその兄弟姉妹のみの場合、遺留分はありません。
遺留分侵害額請求の可能性がない場合、遺言や死因贈与により、その全財産をパートナーに残すことが可能です。
しかし、遺留分がないからこそ自筆遺言や死因贈与の場合、兄弟姉妹からその信ぴょう性を問われます。
勝手に遺言書を作成・偽造したのではないのか?と問われかねません。
まして、口頭やメモだけで契約可能な死因贈与は、あらゆる表現や言い訳が可能です。
最悪の場合、パートナーの親族争う可能性もあります。
パートナーの財産を残す場合、面倒で費用もかかりますが、必ず公正証書遺言を利用した方が後々の争いを避けることができます。
遺産分割の争いの根源はコミュニケーション不足から
遺留分侵害額請求、遺言や死因贈与の問題点を避ける方法は1つしかありません。
それは、パートナー同士の親族・家族と、コミュニケーションを密にしておくことです。
LGBTであるからこそ、異性間よりもより密な関係性が必要です。
共に人生に歩んだパートナーには、全財産を託したいと思うでしょう。
両親や兄弟であれば、その思いを分かってくれるはずです。
しかし、遺産分割協議が進まない最たる理由の多くは、相続人間の不和が原因です。
親族間不仲、コミュニケーションの不足の場合、遺産分割協議の争いの元になります。
特にLGBTカップルの場合、周囲にオープンにしていない(することができない)方が殆どです。
両親にオープンにしていない方が大多数であることは、言うまでもありません。
一緒に人生を共にしても、お互いの両親に全く紹介していない(紹介することができない)カップルも多いのでしょう。
大切なパートナーのために財産を残したい。
しかし、実際に事が起こった後に、親族が初めてパートナーと顔を合わせたところで、いい顔をするわけがありません。
全くコミュニケーションをとらなければ、親族にとってパートナーは赤の他人です。
遺言により全財産をパートナーに指定したところで、突然出現した赤の他人に全て財産をもっていかれたら、気分がいいわけありません。
その為にできることは、ぞれぞれのパートナーの親族とお互いの関係性を強固にするしかありません。
異性間と異なり同性間カップルは、その障壁は大きいでしょう。
しかし、遺産分割における不和を避ける為には、コミュニケーションを密にして、お互いの関係性と理解を深めるほかありません。
LGBTだからこそ、お互いの親族に挨拶・紹介し、家族ぐるみの付き合いをし、異性間カップルと同等の関係性を構築するべきです。
異性間であれば、愛する人をお互いの両親に紹介することは当然です。
大切な人を両親に紹介したい思いは自然なことです。
それは同性間でも異性間であっても変わりません。
しかし、同性間だからそれはできない。というのは、LGBT当事者の甘えかもしれません。
少なくとも僕は甘えていました。
一歩踏み出さなくては、何も変わりません。
本当に愛しているのであれば、「こいつがオレが愛している人だ。」と、勇気をもって言ってやりましょう。
自分が愛しているパートナーを、両親に胸を張って紹介し、パートナーを安心させてあげましょう。
円満遺産分割は、まずはそこからがスタートです。
お互いのコミュニケーションを密にしておくことが、円満相続・遺産分割のカギです。
国や制度の変化を望む前に、まずは当事者たち自身ができることスタートすべきです。
根拠法令
民法554条(死因贈与)
民法1046条(遺留分侵害額の請求)
民法1047条(受遺者又は受贈者の負担額)
まとめ
今回は僕自身が直面するパートナーの遺産分割について、税理士目線かつLGBT目線から投稿しました。
僕自身も長年両親に告げる勇気がありませんでした。
そして相方の事を話したところ、あっさり激怒されてしまい、現在は実家に帰ることができません。
しかし、いつかその時が到来するのであれば、コミュニケーションを怖がっていては事は進みません。
本当にパートナーの事を愛しているのであれば、怖がらず、両親に紹介・コミュニケーション図りましょう。
当事者1人1人の勇気をもった行動が、国の法制度や秩序を変えていくはずだからです。