1人役員法人は現金勘定は使わない。現金払いの経費は役員借入金で処理。
フリーランスや個人事業主が法人化する場合、社員は役員1人のみということがよくあります。
形態が法人というだけであり、その実態は個人同等ということが殆どです。
経理上注意すべき事項は、現金の取り扱いです。
個人事業の場合と異なり、役員1人法人の場合、現金の取り扱いがネックになります。
現金勘定を使用しない方が、圧倒的に経理が容易です。
今回は、役員1人法人の現金経費の容易な精算方法について、ザックリ説明します。
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1人役員法人は現金勘定なしがベター
個人と法人の経理で大きく異なる点は、「事業主借、事業主貸」というプライベート勘定です。
個人の場合、プライベート取引は事業主勘定で経理すれば問題ありません。
しかし、法人に事業主勘定はありません。
法人の現金支出や預金引出は、1円の過不足なく、その全てを法人の事業に使用する必要があります。
個人事業の場合、現金の行き先が不明の場合は、「事業主」という処理が可能です。
一方、事業主勘定がない法人の場合、現金の行き先不明は、絶対にあってはいけません。
法人の現金残高は1円の差異なく、手許現金と現金出納帳の残高と一致させる必要があります。
1円たりともプライベートに流出があってはいけません。
しかし、実際の現金の管理は容易ではありません。
現金出納帳の残高と実際の手許現金が不一致ということは、しばしば起こり得ます。
そこで、レジ金等の店舗を持たない1人役員法人の場合、現金勘定はしない方がベターです。
以下、1人役員法人の場合の、簡単な現金経理の方法をザックリ説明します。
現金は全額通帳に入金してゼロにする
手許現金(実際の現ナマ)と現金の帳簿残高がある場合、まず、現金勘定を0円にします。
0円にする為には、手許現金全額を通帳へ入金します。
(※手許現金と現金帳簿残高が一致していることが前提です。)
現金が手許に存在する場合、必ずその残高が問題になります。
現金の帳簿残高は500,000円あるにもかかわらず、実際の手許現金が400,000円しかない。
100,000円の行き先が不明ということは、現ナマの場合は度々起こり得る事態です。
100,000円は単純な雑損失ではなく、役員給与と見なされることもあります。
そこで現金は全て預金通帳に入金し、その残高を確固たる姿にします。
預金口座に確保されている限り、その残高に一切差異は生じません。
通帳からその取引内容が把握できる振込入金、預金口振込、預金振替がない限り、預金口座の残高は変化しません。
そして、現金で経費を支払う際は、預金口座から、一切出金しないことがポイントです。
現金経費は役員借入金で処理する
日々の法人取引では、何かしら必ず現金払いによる経費が発生します。
しかし、現金で支払う場合、通常は少額な支払いが殆どです。
100,000円を超える現金支払いは、まずありません。
そこで、現金で経費を支払う場合、一旦、役員のプライベート資金で支払います。
役員本人が立て替えることで、役員借入金として会計処理をします。
この場合、領収書や請求書は、必ず法人名で作成してもらいます。
役員が経費を立替える場合、日々、その立替日、金額、内容の立替金一覧表を作成し、原始帳票(レシート等)と共にセットで保管します。
1カ月ごとに立替金一覧表を作成し、毎月の立替金合計額を合計します。
立替金合計額は、当月の残高試算表の役員借入金合計と一致します。
集計表の立替金合計額と役員借入金残高が一致したことで、役員借入金残高が確定しました。
役員借入金を預金口座から振込返済
1か月の役員借入残高が確定したら、その翌月初め、残高試算表の役員借入金を全額役員本人へ返済します。
返済方法は必ず預金口座から、役員本人の預金口座へ振り込みを行います。
役員借入金の返済は、預金から現金を引き出してはいけません。
必ず預金振込により処理を行います。
役員立替金の全額を役員へ返済したことで、最終的に法人が経費を負担したことになります。
また、預金口座を通すことで、一切の過不足は生じません。
過不足が生じないため、必然的に行方不明となる現金はまず発生しません。
フリーランスと変わらない役員1人法人の場合、経理が簡素で完結します。
また、過不足が一切生じることがなく、非常に透明性が高いお薦めの方法です。
まとめ
今回は、1人役員法人は現金勘定は使わない。現金払いの経費は役員借入金で処理。について、ザックリ説明しました。
法人の預金を現金出金した場合、1円たりとも過不足を出してはいけません。
個人の場合のように、事業主とすることはできません。
1人役員の法人を経営する場合、安易に現金勘定を使用することなく、現払いは役員立替金として処理をした方がベターです。