一人社長会社がやってしまいがちな支出。法人に個人支出を介在させてはいけない。
フリーランスで仕事が軌道に乗ってくると、法人化を検討する方が多い傾向にあります。
とりわけ、所得が増えると国保が高額になりがちです。
そのため、1人役員として法人成りをする方もいます。
ところが、法人成りをしたにもかかわらず、個人と同じ感覚で支出をする方がいます。
法人成り後は、個人と同じ感覚で支出をしてはいけません。
今回は、一人社長法人がやってしまいがちな支出について、ザックリ説明します。
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役員個人の電子マネーにチャージ
フリーランスの多くは、電子マネー決済を利用しています。
クラウド会計では、殆どの電子マネー連動を行う事が可能です。
交通機関利用の多い方は、交通系電子マネーを利用すれば、大幅に経理の手間を省けます。
クレジットからオートチャージを利用すれば、更に利便性が高くなります。
しかし、法人成り後も、個人の時と同じように、電子マネーを使ってしまう方がいます。
例えば、法人普通預金口座から、役員個人の電子マネーにチャージしてしまった場合です。
役員個人の電子マネーにチャージした場合、役員個人にお金を渡したということです。
役員個人の電子マネーのため、自由に使用できるからです。
チャージした時点で、役員貸付金になります。
役員が個人の電子マネーで法人業務の旅費交通費を支払った場合、役員立替金(役員借入金)として処理されます。
結果的に、役員立替金と役員貸付金が相殺されますが、複雑で煩雑な処理になりがちです。
また、役員個人の電子マネーにチャージした場合、役員の私的決済に利用可能です。
要するに、役員個人の電子マネーにチャージするという行為は、役員報酬の支給そのものです。
絶対に法人普通預金口座から、役員個人の電子マネーにチャージしてはいけません。
法人名義の電子マネーを作成できない場合、法人名義のクレジットカード、デビットカードを利用した方が無難です。
役員個人社宅の造作費用を法人が支出
一人社長会社の場合、役員の自宅を事務所利用する方がいます。
役員VS法人間で賃貸借契約を締結し、適正価格で法人へ賃貸するパターンです。
適正賃貸料で実際に法人業務を行うのであれば、大きな問題にはなりません。
しかし、役員社宅に対する造作設備を、法人が負担しているケースがあります。
例えば、エアコン、ブラインド、壁装飾など、明らかな役員の自宅に対する造作設備です。
役員自宅の内、法人に対する賃貸スペース部分は、個人では利用しないことが建前です。
しかし、これら設備は役員個人の意向が強く表れ、役員がその便益を受ける可能性があります。
一般の会社であれば、役員個人の自宅のエアコン設置費用を法人が負担するなど、考えられないでしょう。
役員報酬とみなされることもあるため、役員個人自宅に対する造作設備に対する支出は、行わないほうが健全です。
役員個人が使うバック・時計を法人が支出
法人設立に伴い、PCたタブレット等の消耗品を揃えることは珍しくありません。
法人業務に必要なものであれば、適正な支出として認めれます。
しかし、消耗品費の中に、明らかに役員個人が利用するものが見受けられることがあります。
例えば、顧客訪問用としてバッグ、ビジネスシューズ、スマートウォッチなどです。
一般の会社であれば、役員個人だけが使用する時計やバッグを法人が負担するなど、考えられないでしょう。
フリーランスから法人成りした役員1人法人の場合、当然のように支出してしまいがちです。
バッグ、ビジネスシューズ、スマートウォッチなどは、役員個人が身に着けるものです。
役員の自宅を事務所としている場合、それらのバッグ等は、確実に役員個人の自宅に保管され、公私混同は明らかです。
法人が支出する費用は、個人に対する支出は認められません。
一般の会社で、制服や会社ネーム入りでもない限り、バッグ、シューズ、時計を購入することなど、まずあり得ません。
役員給与認定されることもあり、役員個人が身に着けるものには、支出してはいけません。
法人成り後は法人VS個人の介在しないこと
前述で挙げた事項は、法人と個人を介在させていることが、そもそも失敗です。
フリーランスから法人成りした場合、結局は自分1人であり、業務形態に変化はありません。
組織や名称のみ変化しただけであり、個人と同様の感覚で、支出をしてしまいがちです。
しかし、法人成り後は、個人と同じ感覚で支出することはできません。
法人から個人に金銭支出があった場合、役員報酬そのものです。
役員1人法人の場合、その支出に個人が介在していないか、見極めるが必要です。
まとめ
今回は、一人社長会社がやってしまいがちな支出について、ザックリ説明しました。
役員個人の電子マネーチャージ、役員自宅に対する内部造作や消耗品は、よく見受けられます。
法人成り後も、個人事業と同じ感覚で、支出をしている証拠です。
法人成り後は個人時代の感覚は捨て、法人が負担すべき支出か、真剣に鑑みる必要があります。