両親と仲が悪いLGBTカップルの財産分与の鉄則。遺留分侵害額請求権の発動に備えること。
共働きのLGBTカップルの場合、子供がいる夫婦間と比較して、財産が多い傾向があります。
とりわけ男同士の場合、そこそこの預貯金等を保有するカップルも。
しかし、不運な事故・病気により、若くしていずれかが亡くなる場合もあります。
同性カップル間でも、遺言公正証書により、お互いに全ての財産を遺すことが可能です。
ただし、必ず念頭においておくべきことがあります。
公正証書による遺言を作成していても、両親が健在の場合、両親に遺留分があります。
遺留侵害額請求権の発動は、絶対に避けなければなりません。
両親と仲が悪いLGBTカップルは、遺留分について、理解しておく必要があります。
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両親には遺留分がある
現状、同性カップル間は、遺言書を作成しない限り、お互いに財産を遺すことはできません。
遺言公正証書を交わし、「全ての財産を包括して遺贈する」文言により、お互いに遺産を遺すことができます。
お互いが相続人に該当しない同性間の場合、特定の財産を指定することはできません。
必ず全ての財産(借金等の負債も含みます。)を指定する必要があります。
お互いが遺言公正証書を交わすことで、LGBTカップルは、お互いに財産を遺すことができます。
しかし、LGBTカップルの場合、お互いの両親ともに公認という状況は、非常に稀なケースです。
とりわけ、長年一緒に生活するLGBTカップルの場合、
「両親とは音信不通。ずっと会っていない。」
「親には二度と会わない。実家には帰らない。」
「男同士で愛し合うなど、理解できない。」
といった状況は、珍しいことではありません。
このような場合、不運にもいずれかが亡くなった際、その両親から遺留分侵害額請求権を発動されることがあります。
同性カップル間で遺言公正証書を交わしても、両親が存命の場合、両親には遺留分があります。(兄弟姉妹に遺留分はありません。)
両親には最低限、その遺産の1/3をもらう権利があります。
例えば、パートナーが3,000万円の預貯金を遺して死亡した場合、両親には遺留分として、1,000万円を請求する権利があります。
両親が遺留分を請求することを、遺留分侵害額請求権といいます。
パートナーの遺産が不動産など金銭以外の場合でも、遺留分は金銭で返還することが原則です。
両親と不仲・音信不通の場合は、遺留分のことを知っておく必要があります。
両親には必ず遺留分がある
若くして共に生活するLGBTカップルの場合、40代半ば以降、そこそこ財産が形成されています。
しかし、45歳から50歳にもなると、体調を崩したり大病が発見されることがあります。
そして、不運にも、若くして亡くなられたカップルもおります。
45歳から50歳前後の方の場合、ご両親もまだまだ存命です。
ただし、「長年両親と仲が悪くLGBTに理解がない。」といった方も珍しくありません。
このような場合、家族と全くコミュニケーションを取れていないも同然です。
問題は、パートナーが亡くなり、初めて一方の両親に顔を合わせるケースです。
LGBTという理由で両親との仲が悪い場合は、想定されるケースです。
相手の両親からすると、「誰だかわからない赤の他人に、息子の財産をもっていかれる!納得できない!」という感覚に陥ります。
このような場合、その両親から、遺留分侵害額請求権を発動される可能性があります。
両親には放棄しない限り、遺留分が認められています。
せっかくお互いに築き上げた財産を、パートナーに遺すことができません。
また、パートナーの意思も尊重されません。
LGBTカップルが本気でパートナーに財産を遺すために、その問題は1つだけ。
遺留分侵害額請求権の発動は、絶対に避けなければなりません。
家族間の理解は時間をかけて深めよう
お互いの家族が円満であるファミリーの場合、まず、遺留分の問題は生じません。
亡くなられた方の意思を尊重されるからです。
遺留分の問題が発生するケースは、コミュニケーションが取れていない家族です。
これは、LGBTカップル間の家族に関わらず、一般の相続の係争でいえることです。
両親に理解がないLGBTカップルの場合、その家族は不仲になりがちです。
よって、遺留分の問題が発生しやすいと考えられます。
遺留分侵害額請求権の発動を抑えるため、お互いの家族関係を、円満にする必要があります。
男同士で愛し合うなど、信じられない。理解できない。という感覚は、まだまだ一般的です。
当事者の家族になった場合、即座に受け入れることなどできないでしょう。
しかし、だからといって何もせずにいると、パートナーに財産を遺すことができません。
遺留分を争う可能性もあります。
最悪の場合、最愛のパートナーと自分の両親が、争うことになります。
人生を共に歩むパートナーができたのなら、時間をかけて両親と理解を深めましょう。
根拠法令
民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
民法第990条(包括受遺者の権利義務)
まとめ
ゲイである僕自身も、相方とお互いに公正証書を結んでいます。
そして、ゲイである僕は、両親と仲良くありません。
実家に帰る気もありませんし、1円たりとも自分の財産を両親に遺すつもりはありません。
僕自身が当事者だからこそ、僕がしてしまった過ちを繰り返してほしくありません。
愛するパートナーに財産を遺すのなら、両親との理解を深めておく努力が必要です。