副業の雑所得を事業所得に変更する届出関係や手続きについて。

令和4年分から会社員の副業について、事業所得による申告が可能になりました。

 

事業性を鑑みることを基本としつつ、帳簿保存・記帳要件等を満たすことが条件です。

 

雑所得として申告した会社員の方は、事業所得に変更する手続きに悩む方も少なくありません。

 

今回は、副業の雑所得を事業所得に変更する届出関係や手続きについて、ザックリ説明します。

 

ここではあくまでも、法令に従った説明のみです。

 

個別具体的な対応は、所轄税務署により異なります。

 

 

 

 

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必要なものは開業届と青色申告承認申請書

事業所得として申告する場合、通常、開業届を提出します。

 

また、青色申告をする場合は、青色申告承認申請書の提出が必要です。

 

いずれも、後述する提出期限が設定されています。

 

しかし、副業を行う会社員の場合、よく理解せず、既に開業届や青色申告承認申請書を提出している方がいます。

 

よって、既に開業届や青色申告承認申請書を提出済か否かにより、対応方法が異なります。

 

通常は、以下、後述する3パターンの場合が殆どです。

 

ただし、対応方法は税務署により異なるため、ご自身で確認した方が無難です。

 

以下、法令に従って、副業の雑所得を事業所得に変更する届出関係等について説明します。

 

前年までに開業届も青色申告承認申請書も提出していない場合 

前年までに開業届を提出していない場合、本年中に、新たに事業を開始したことになります。

 

自身で開業日を設定し、開業届を提出します。

 

開業届の提出期限は、開業日から1か月以内です。

 

 

 

【例:令和5年4/1を開業日にした場合】

 

 

 

所得税法における開業日は、法令で特に定められていません。

 

これまでは、副業が事業と称する程度ではなかった(いわゆる雑所得)。

 

しかし、事業と称する規模になった(いわゆる事業所得)その日が、一般的に開業日です。

 

また、青色申告承認申請書の提出期限は、開業日から2か月以内です。

 

通常は、開業届と併せて提出します。

 

 

 

【例:令和5年4/1を開業日にした場合】

 

 

 

そして、開業日以降は、青色申告の条件を満たす会計記帳が必要です。

 

複式簿記による帳簿記帳と帳簿書類の保存が必要です。

 

 

 

【例:令和5年4/1を開業日にした場合】

 

 

 

3/31以前は、今まで通り、雑所得として申告します。

 

そして、開業日の4/1以降は、事業所得として申告します。

 

辻褄を合わせるのであれば、開業日前後で所得を分ける方がベターです。

 

前年までに開業届のみ提出している場合 

前年までに開業届を提出している場合、既に事業を開始していることになります。

 

例え今まで雑所得で申告していても、建前上、既に事業を営んでいることになります。

 

よって、本年から事業所得に変更する場合、開業届は不要です。

 

本年の1/1以降、複式簿記等による適正な帳簿記帳や帳簿保存を行うだけです。

 

 

 

【例:令和5年1/1から事業所得にする場合】

 

 

 

ただし、青色申告を行う場合、本年の3/15までに、青色申告承認申請書の提出が必要です。

 

かつ複式簿記による帳簿記帳や帳簿保存、青色申告の条件を満たせば、青色申告が可能です。

 

 

 

【例:3/15までに申請書を提出した場合】

 

 

 

しかし、3/16以後に青色申告承認申請書を提出した場合、本年分は白色申告になります。

 

青色申告は来年分からになります。

 

 

 

【例:3/16以後に申請書を提出した場合】

 

前年までに開業届と青色申告承認申請書を提出している場合 

前年までに開業届と青色申告承認申請書を提出している場合、既に青色申告による事業を開始していることになります。

 

例え今まで雑所得で申告していても、建前上、既に事業を営んでいることになります。

 

よって、本年から事業所得に変更する場合、開業届は不要です。

 

また、青色申告承認申請書の提出も必要ありません。

 

本年の1/1以降、複式簿記等による適正な帳簿記帳や帳簿保存を行うだけです。

 

 

 

【例:1/1から事業所得に変更する場合】

 

根拠法令

所得税法第143条(青色申告)

所得税法第144条(青色申告の承認の申請)

所得税法第229条(開業等の届出)

まとめ

今回は副業の雑所得を事業所得に変更する届出関係や手続きについて、ザックリ説明しました。

 

会社員の方から、割とよくある相談事項です。

 

雑所得として申告してきたものの、副業開始時、開業届を提出済の方は少なくありません。

 

その場合、建前上は開業しているので、青色申告承認申請書の提出期限が問題になります。

 

税務署によりその対応が異なるので、疑問に感じる場合は、個別に税務署に問い合わせた方が無難です。