外国人労働者が受け取る年金保険の脱退一時金(退職金)と選択課税について。
コロナ禍の規制解除により、ビジネス目的による海外の往来が増加しています。
日本で勤務していた外国人が、帰国するパターンも増えています。
外国人も日本人と同様に社会保険に加入しますが、帰国と共に年金保険から脱退します。
帰国した場合、脱退一時金の支給を受ける権利がありますが、源泉徴収されたまま、日本の法令を知らずに現地で放置してしまう方も多いようです。
今回は、脱退一時金の支給を受けた場合の退職金の課税について、ザックリ説明します。
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脱退一時金は退職金として源泉分離課税
外国人労働者が帰国する場合、日本の年金保険から脱退します。
掛け金は脱退一時金として受け取る権利があり、日本を発ってから2年以内に請求する必要があります。
ただし、日本国内勤務に基づく退職金であるため、非居住者に対する国内源泉所得とされます。
よって、脱退一時金の支給を受ける場合、20.42%の源泉徴収(源泉分離課税)が行われます。
しかし、20.42%という税率は非常に高額です。
本来の退職金課税がされた場合と比べ、手取り額が減少してしまう非常に不利な税率です。
そこで、脱退一時金の支給を受けた場合など、非居住者が退職金の支給を受けた場合、退職金の選択課税(いわゆる確定申告)を受けることが可能です。
脱退一時金(退職金)の選択課税
脱退一時金(以下、退職金)の選択課税とは、脱退一時金を通常の退職金の支給を受けた場合と同様に課税する方法です。
以下、脱退一時金が5,000,000円、勤続期間5年の場合の例です。
脱退一時金を請求した場合、20.42%の源泉分離課税が行われます。
一方、退職所得の選択課税をする場合、通常の退職所得の計算を行います。
退職金から勤続期間に応じた退職所得控除額を差引き、更に1/2を乗じ、課税される退職所得を算出します。
そして、所得控除は一切適用せず、課税退職所得に超過累進税額を乗じます。
上記の場合、確定申告と源泉分離課税の差額が、還付される結果になります。
税率が20%以下の場合は必ず還付になるため、非常にメリットが大きい制度の1つです。
ただし、適用するためには留意事項があります。
脱退一時金(退職金)の選択課税
退職金の選択課税は、支給を受けた年の翌年1月1日以降に行うことが可能です。
また、脱退一時金決定通知を添付する必要があります。
更に、納税者である外国人は既に現地に帰国しているため、確定申告を行うことができません。
納税管理人の届け出を税務署に届け出ることで、確定申告を代理してもらう必要があります。
なお、退職金の選択課税の適用は、脱退一時金だけではありません。
日本人が海外勤務となり、海外現地滞在中に退職した場合にも適用されます。
非居住者が日本から退職金を受け取り源泉徴収された場合、覚えておくと便利な制度です。
根拠法令
所得税法第171条(退職所得についての選択課税)
所得税法第173条(退職所得の選択課税による還付)
所得税法第212条第2項(源泉徴収事務)
所得税法施行規則70条(退職所得の選択課税による還付のための申告書の記載事項)
所得税法施行規則71条(退職所得の選択課税による還付のための申告書への添附書類)
まとめ
今回は、外国人労働者の脱退一時金の選択課税について、ザックリ説明しました。
源泉分離課税は多額になりがちですが、選択課税の事実を知らない企業もいるようです。
納税者本人にとって、選択課税は非常にメリットが大きい制度です。
脱退一時金の請求の際は、納税管理人を定めることは念頭においた方がベターです。