LGBTカップルの遺言書は遺留分に考慮は必要?遺留分の考慮が必要なLGBTカップルの遺言書について。
同性カップルがパートナーに財産を遺す場合、遺言書の作成が必須です。
日常、遺言書に馴染みがない方は、その作成に戸惑う方も少なくありません。
そして、遺言書を作成の際、しばしば遺留分の問題に直面します。
LGBTカップルの方もよくわからないまま、遺留分に悩む方も多いようです。
遺言書作成時は、必ず遺留分を!と注意する方もいるからです。
しかし、LGBTカップルの場合、本当に遺留分を考慮する必要があるのでしょうか。
今回はゲイ当事者の僕が、LGBTカップルの遺言書に遺留分の考慮が必要かざっくり説明します。
以下、ここでいう遺言書は、公正証書遺言を前提としています。

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Contents・目次
基本的にLGBTカップルの遺言書に遺留分は考慮不要
一般的にLGBTカップルの場合、実子を持つことはありません。
一般的なLGBT当事者は、単純な親族関係が多い傾向にあります。(兄弟姉妹がいる場合。)

上記の場合、遺留分がある親族は両親のみ(又は祖父母)です。
兄弟姉妹に遺留分はありません。
一般的に、遺言書について考える年齢は40歳前後です。
40歳にもなれば、祖父母は逝去されている場合が殆どです。
よって、祖父母のために遺留分を考慮する必要性はありません。
また、自身が40歳前後というと、両親は若くても65歳前後から75歳ほどです。
当事者同士が不慮の事故なく健康に生活している場合、順当にいけば、両親が先に亡くなる可能性の方が高いと考えます。
また、例え兄弟姉妹がいたとしても、彼らには遺留分はありません。

上記のように、LGBT当事者間が健康であれば、自然に遺留分権利者は寿命によりいなくなります。
よって、特段の事情がない限り、通常は遺留分に考慮する必要はありません。
多額の借金がある場合を除き、全ての財産をパートナーに遺す全部包括遺贈が最も妥当な遺言の方法です。
しかし、後述の場合は、遺留分を検討する必要があります。
遺留分考慮1 兄弟姉妹の中が劣悪
LGBT当事者の場合、兄弟姉妹の関係が劣悪な場合も多々あります。
兄弟姉妹に理解してもらえず、一切、音信不通という方も珍しくありません。
最悪のパターンは、当事者のいずれかが不慮の事故や病気で亡くなり、兄弟姉妹との関係が劣悪なパターンです。
兄弟姉妹が両親に対し、遺留分について、横槍を入れる場合やいちゃもんをつけ、横取りを企てることがあります。
とりわけ、お互い家族間に一切紹介していない場合、兄弟姉妹が「どこの誰だかわからない男が、財産を全て奪おうとしている。」と両親を誘惑することがあります。

遺産の多寡にかかわらず、遺留分の権利があること主張するように両親に吹き込むのです。
そして、亡くなったパートナーの両親は、まんまと兄弟姉妹に誘惑され、残されたパートナーに対し、遺留分侵害額請求を起こします。
この状況の回避策は、少なくとも、両親にだけはパートナーを紹介しておくことです。
そして、両親に対して、パートナーに遺産を遺す旨を伝えておくことです。
両親であれば、例え兄弟姉妹から遺留分について横槍があったとしても、子の意思を妨げるような争いは望まないでしょう。
パートナー同士でお互いを紹介し合い、意思表示をすることが最も重要です。
遺留分考慮2 離婚した妻との実子がいる
多様性に乏しかった2020年以前、LGBT当事者の方の中には、自分を偽り女性と結婚し、実子をもうける方もいました。
そして、その後離婚し、男性パートナーと生活する方もいます。
当然、自分の財産を男性パートナーに遺したいという考えに至ります。
しかし、離婚後も実子は当然に相続人となり、遺留分を有します。

離婚した妻と関係性が悪い場合、遺留分を主張をされることも珍しくありません。
まだ将来がある実子がいる点を考慮すると、遺留分を考慮すべきパターンです。
遺留分考慮3 パートナーが若く資産有り&余命が少ない
LGBTカップルの中には、一方が若い年の差カップルもいます。(50歳と30歳など)
若い方でも一定金額の預貯金を有し、収益不動産を有する方も珍しくありません。
しかし、不運にも、若くしてパートナーが病に倒れ、余命が少ないこともあります。
パートナーが若い場合、その両親もまだまだ元気な傾向にあります。
そして、パートナーが有する遺産について、争いの火種になることも珍しくありません。

このような場合は、遺贈する資産を考慮し、遺留分を検討する必要があります。
前述した通り、両親に紹介が済んでいない場合、また兄弟姉妹との仲が悪い場合、その遺産が争いの要因となるからです。
遺留分侵害額請求を回避するたった1つの方法
殆どの遺留分の問題は、親族関係の悪さが起因となる傾向にあります。
即ち、両親や兄弟姉妹との関係性が良好であれば、遺留分の問題は回避可能です。
両親であれば、特段の理由がない限り、自分の子が選んだ相手を退けることは考えないでしょう。
そのためには、お互いがお互いをお互いの両親に紹介しておくことです。
遺留分侵害額請求の回避は、まずはそこから始まります。
LGBTカップルにとって、現行の法令上、パートナーに遺産を遺す方法は、遺言書作成のみです。
だからこそ、遺言書の役割は重要です。
その作成の準備として、お互いをお互いの両親や兄弟姉妹に紹介することです。
僕らはこの当然の行為を「話しにくいから。」という理由で避ける傾向があります。
まずは勇気をもってお互いの両親に紹介し、自分たちの意思表示をすることが肝要です。
根拠法令
民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)
民法第1046条第1項(遺留分侵害額の請求)
まとめ
今回は、LGBTカップルの遺言書は本当に遺留分の考慮が必要か、ざっくり説明しました。
順当にいけば両親は亡くなるので、殆どの方の場合、遺留分の考慮を不要だと考えられるます。
しかし、兄弟姉妹との仲が悪い場合、実子がいる場合、若くして一定金額の資産を有する場合は、遺留分を検討すべきです。
そしてまずは、お互いが勇気をもってお互いの両親に紹介し、自分たちの意思表示をすることが肝要です。
