所得税損失申告書の作成手順その3。赤字の事業所得と黒字の雑所得や一時所得があるとき。
企業の副業解禁以来、会社員の方で副業に注目する方が増えました。
事業収入や不動産収入がある方でも、本業以外に副業をされている方が増えています。
副業というのは、様々な良し悪しがあるにせよ、注目を浴びています。
さて毎年確定申告の時期になると、本業で事業を行う方からは、
「副業による雑所得や保険金などの一時所得は、事業所得や不動産所得のマイナスと相殺できな
いよね!」
と言った問い合わせがよくありました。
事業所得や不動産所得がマイナス(赤字)である場合、黒字の雑所得や一時所得と相殺できま
す!
事業以外に副業がある場合は、しっかり確定申告しましょう。
今回は、事業所得が赤字であり、黒字の雑所得や一時所得と相殺する場合の、所得税の損失申告書について説明します。
なお、国税庁のe-taxより簡単に作成可能ですが、実際にどのように数字が流れ作成されるのか体系的に必ず理解しておきましょう。
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Contents・目次
確定申告書第2表で収入の確認
まず確定申告書第2表で収入の確認を行います。
今回は黒字の雑所得と一時所得が記載されています。
これら黒字の所得を、マイナスの事業所得と相殺します。
青で囲った部分は、副業民泊による「黒字の雑所得」です。
緑で囲った部分は、保険金収入による「黒字の一時所得」です。
「黒字の雑所得」を事業所得や不動産所得のマイナスと相殺する場合、青で囲った部分を確定申告書の第1表へ転記します。
雑所得の収入金額1,450,000円は第1表の㋗へ、差し引き金額712,500円を第1表の⑦へ転記します。
しかし、「黒字の一時所得」を事業所得や不動産所得のマイナスと相殺する場合には、緑で囲った部分は確定申告書の第1表へ転記しません。
「黒字の一時所得」は損失申告書に記載します。
確定申告書第1表の作成
前述どおり、確定申告書2表から第1表へ雑その他「㋗」、雑所得「⑦」へ転記します。
今回は事業収入㋐は4,000,000円、事業所得①はマイナス1,300,000と仮定しており、予め記載しています。
この事業所得①のマイナスを、黒字の雑所得と一時所得と相殺します。
黒字の一時所得は、損失申告書で事業所得と相殺する為、第1表には記載していません。
また、損失申告書で所得計算を行うため、所得合計には何も記載しません。
一見、上記の申告書では、赤字と黒字の相殺が全く行われていないように思えますが、これで第1表は完成です。
黒字と赤字の相殺は、損失申告書第4表で行います。
損失申告書第4表を作成
1、損失額又は所得金額の欄
まず、損失申告書第4表の「1損失額又は所得金額」の部分を作成します。
「59」には、確定申告書1表の①から⑦までを合計して記載します。
下記の「59」には、①マイナス1,300,000円+⑦712,500円=△587,500円が記載されます。
よって、「59」では既に事業所得のマイナスと黒字の雑所得は相殺済です。
次に一時所得の行「C」差引金額の欄には、第2表に記載した一時所得の差引金額700,000円を転記します。
一時所得からは500,000円の特別控除が認められ、特別控除の欄に500,000円を記載します。
そして「64」の損失又は所得金額の欄には200,000円(700,000円-500,000円)を記載します。
これでようやく、黒字の一時所得を相殺する準備が整いました。
なお注意点は、黒字の一時所得を事業所得や不動産所得のマイナスと相殺する場合、1/2はしません!
2、損益の通算
次に「2、損益の通算」の欄を作成します。
ここでは、黒字の一時所得を相殺する処理を行います。
「Ⓐ損益通算前」の列の「59」と「64」には、「1損失額又は所得金額」の「59」と「64」からそっくり写しましょう。
そして「Ⓐ損益通算前」の経常所得「59」の△587,500円と一時所得「64」の200,000円を相殺します。
△587,500円+200,000円=△387,500円を、お隣のⒷ第1次損益通算後「59」の行に記載します。
今回は他に何もないので、そのまま右にスライドして転記します。
そして「71」にマイナス387,500円を記載します。
これで黒字の一時所得とマイナスの事業所得の相殺が完了しました。
後は相殺後の赤字の残りマイナス387,500円を、翌期へ繰り越すだけです。
まとめると下記のようになります。
3、翌年以後へ繰り越す損失額
更に「71」の金額を、「3翌年以後へ繰り越す損失額」の「72」へ記載します。
これで翌年へ赤字の繰り越しも完了しました。
まとめ
今回は事業所得や不動産所得のマイナスを、一時所得や雑所得と相殺する場合の、損失申告書の書き方について説明しました。
一時所得を相殺するには、損失申告書第4表で行います。
e-taxでは全て自動計算を行ってくれますが、どのように計算が行われていくのかは、把握するようにしておきましょう。
また、翌年へ繰り越した損失がある場合には、来年の確定申告で使用する為、忘れずに前年の確定申告書を保管しておきましょう。