消費税の税込経理と税抜経理の違い。簡易課税適用者は税込経理がおすすめ。
令和5年10月1日よりインボイス制度が始まります。
小規模な個人・法人・フリーランスの方もインボイス登録を行い、消費税の課税事業者になる方もいるようです。
小規模事業者の多くは簡易課税制度を採用する傾向がありますが、その経理処理として、税込 or 税抜のいずれを採用するか悩むようです。
今回は税込・税抜経理の相違点と小規模事業者がいずれを採用すべきかについて、ザックリ説明します。
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税抜経理方式の概要
税抜経理とは、売上や経費を税抜価格で経理し、消費税分は別途「仮払消費税」、「仮受消費税」と経理する方法です。
具体的な帳簿、会計処理、貸借対照表、損益計算書は下記のイメージです。
例:【売上1,100円、仕入440円、経費220円の場合(いずれも税込)】
会計仕訳ごとに、消費税の判定(課税、非課税、不課税)を行い、税抜処理を行います。
税抜処理した消費税は、貸借対照表の資産と負債の部に表示されます。
そして損益計算書は、税抜金額で表示されます。
最終的に確定申告で、仮受消費税と仮払消費税が相殺され、その差額が納付すべき消費税額として貸借対照表に表現されます。
税込経理方式の概要
税込経理とは、売上や経費を税込価格で経理し、税抜経理のように「仮払消費税」、「仮受消費税」は使用しません。
具体的な帳簿、会計処理、貸借対照表、損益計算書は、下記のイメージです。
例:【売上1,100円、仕入440円、経費220円の場合(いずれも税込)】
税抜経理と同様に、会計仕訳ごとに、消費税の判定(課税、非課税、不課税)を行います。
税込経理の場合、確定申告時の消費税計算まで、消費税額は貸借対照表や損益計算書に一切表現されません。
いずれも税込で表示されます。
最終的に確定申告で納付すべき消費税を計算し、貸借対照表に未払消費税、損益計算書に租税公課として表現されます。
税込経理の場合、年度末に租税公課を計上することで、税抜経理と変わらない利益金額や所得金額になります。
言い換えると、年度末に消費税を計算するまで利益金額や所得金額が、大きく計上されていることになります。
税抜経理と税込経理の比較
税抜経理の場合、税抜価格とその消費税額が適正かチェックする必要があり、やや煩雑になります。
しかし、貸借対照表に消費税額が表現されるため、日々の消費税額を把握できます。
一方、税込経理の場合、消費税を別途経理する必要がないため、税抜経理に比べて記帳方法は容易です。
ただし、税抜処理がされないため、決算時まで実際の消費税額を把握することができません。
税抜経理であれば、本則課税の場合、仮受消費税と仮払消費税の差額により、概ねの消費税の納税額を把握可能です。
簡易課税の場合、仮受消費税に業種別の率(例:サービス業の場合は50%)を乗じれば、概ねの消費税の納税額を把握可能です。
また、税込経理の場合、確定申告時に消費税額を計算し租税公課を計上するまで、実際の利益金額や所得金額を把握できません。
税抜経理を採用している場合、日々の損益計算書の利益金額や所得金額が、決算時や確定申告時に変動することはありません。
一般的に税抜経理で行う方が多い傾向がありますが、簡易課税を適用する小規模事業者の場合、税込経理の簡単な経理がおすすめです。
簡易課税適用者は税込経理がおすすめ
簡易課税適用者が納める消費税額は、仕入・経費に関する消費税は一切考慮せず、売上に関する消費税のみで計算します。
課税売上さえ正しく経理すれば、消費税の納税額は適正に算出されます。
本則課税の場合、1つ1つの会計仕訳ごとに消費税の判定(課税、非課税、不課税)を行います。
しかし、簡易の場合は、売上以外の科目(仕入や経費)について、その必要がありません。
万が一、仕入や経費を全て非課税・不課税としても、税抜処理されることがないため、貸借対照表、損益計算書に一切影響しません。
また、納付する消費税額は売上に関する消費税のみで算出されるため、消費税額にも一切影響しません。
よって、簡易課税適用者の場合、仕入や経費の可否判定を要さない、税込経理で簡単に経理をすることをお薦めします。
根拠法令
消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて
まとめ
今回は、消費税の税込・税抜経理の相違点について、ザックリ説明しました。
簡易課税を適用する小規模事業者の場合、税込経理で簡単に処理する方法がお薦めです。
簡易課税により税込経理を採用する場合は、概ねの売上にかかる消費税を捉えることができれば、納税額の予想は容易です。
インボイス登録により新たに課税事業者になる場合、必ず税込・税抜経理の相違点を把握しておく必要があります。