配偶者名義による副業所得の申告は脱税行為。所得の付け替えをしてはいけない理由。
昨年10月の通達改正により、会社員の副業も、会計記帳や帳簿保存をすることで、事業所得による申告が公に可能となりました。
副業の推進を押し上げるかと思いきや、依然、本業に副業が発覚しては困る方も多いようです。
そこで以前より、副業の発覚を防ぐため、副業所得を配偶者名義 or 親族(父や母)名義で申告しようとする方がいます。
いわゆる、所得の付け替えです。
しかし、それは明らかな法令違反です。
所得の付け替えは、重加算税の対象である、売上の仮装隠ぺい行為であることは言うまでもありません。
副業所得を他人名義で行ってはいけない理由は、脱税行為そのものだからです。
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収入は本来の所得者本人に課税される
収入は言うまでもなく、本来の所得者本人に課税することがルールです。
例え配偶者名義で副業を行い、売上代金の受取口座を配偶者名義口座にしていても、配偶者の所得ではありません。
実際に夫が副業を行っているのであれば、純然たる夫の所得です。
この場合、配偶者は単なる名義です。
実際に確定申告をするから不正はない。と思う方も多いようです。
しかし、配偶者や親族名義で確定申告をすることで、課税上の弊害が生じます。
その理由は、一般的に、配偶者や親族(父や母)の方が、所得税率が低いからです。
本来の副業者(夫)が確定申告する場合
以下は、年収500万円の会社員が副業を行う場合の所得税・市民税の負担額のイメージです。
給与天引社会保険70万、副業売上100万、、経費0、青色65万円控除としています。
また、所得控除は、給与社保、配偶者控除、基礎控除のみとしています。
副業所得の申告により、給与所得と副業所得が合算され、所得税・市民税が計算されます。
上記の場合、元々の所得税率が10%の会社員です。
副業所得の申告により、350,000円所得が追加されます。
追加納税額は、以下のイメージです。
追加納税する所得税は、増加した副業所得に対し、35,000円(35万円×10%)です。
更に、市民税も増加した副業所得に対し、35,000円(35万円×一律10%)発生します。
副業所得の申告により、合計70,000円の税負担が生じます。
しかし、副業所得を専業主婦名義で確定すると、所得税や市民税の金額が変化します。
妻名義で副業所得を申告する場合
以下は、専業主婦が副業を行う場合の所得税・市民税の負担額のイメージです。
社会保険は夫の被扶養者、副業売上100万、、経費0、青色65万円控除としています。
また、所得控除は基礎控除のみとしています。
所得税率は5%です。
しかし、副業所得35万円は基礎控除内のため、所得税も市民税も0円です。
副業所得を配偶者名義で確定申告した場合、本来の副業所得者の夫で申告するよりも、明らかに納税額が少なくなります。
無職の配偶者の方が、所得金額や所得税率が低いからです。
しかし、当然、法令違反であることはいうまでもありません。
配偶者名義で確定申告をすることで、確実に納税額が減少します。
明らかな法令違反・脱税行為そのものです。
故に、配偶者名義による申告=所得の付け替え行為を行ってはいけません。
所得の付け替えは法令違反
前述のように、副業所得を配偶者名義で申告するということは、所得の付け替えです。
本来の所得者である、夫の売上(所得)の隠蔽行為そのものです。
所得金額の付け替え行為が、売上除外または悪質な所得隠しと見なされた場合、最悪は重加算税の対象になります。
よって、副業所得の付け替え行為は、節税や副業発覚の防ぐ方法ではなく、脱税行為です。
配偶者や親族名義で申告することで節税する。という会社員の方をみかけますが、明らかな法令違反です。
副業所得は必ず本来の所得者名義で確定申告をする必要があります。
根拠法令
所得税法第12条(実質所得者課税の原則)
所得税法基本通達12-2(事業から生ずる収益を享受する者の判定)
所得税法基本通達12-5(親族間における事業主の判定)
まとめ
今回は、副業所得の付け替えをしてはいけない理由について、ザックリ説明しました。
税負担軽減目的の場合、明らかに意図的行為のため、悪質行為と見なされる可能性があります。
なぜ所得の付け替えをしてはいけないのか。
その理由を理解した上で、本来の副業所得者で確定申告することを心がけましょう。