LGBTカップルの養子縁組の注意点。養子縁組で相続・遺産分割問題は解決できない。
LGBTカップルの最大の問題点は、相続と遺産に関すること。
お互い他人同士のため、異性間のように、自然に財産を遺すことはできません。
これらの問題は、同性婚が実現し、お互いが親族になることで解決します。
そこで手っ取り早く親族になる方法として、養子縁組があります。
養子縁組により、制度上の多くの問題が解決すると思われます。
しかし、僕自身が相方と暮らすゲイ当事者として、養子縁組はおすすめできません。
養子縁組では、相続・遺産分割の問題を解決することはできません。
養子縁組をおすすめできない理由を、ザックリ説明します。
なお、ここでいう養子縁組とは、普通養子縁組を前提としています。
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Contents・目次
養子縁組とは親と子になる関係
養子縁組とは、親と子になる関係です。
自動的にパートナーの内、年上が養親(親)、年下が養子(子)になります。
お互いが親と子になることにより、結果的に親族になります。
しかし、僕らはパートナーと、親と子になることを望んでいるわけではありません。
養子縁組は親と子になり、扶養するための制度です。
遺産目的・相続目的の為に養子縁組を利用することは、本来の制度の趣旨から外れています。
よって、趣旨から外れた目的で制度を利用すると、争いの火種になることがあります。
揉め事の発生は、当然、相続や遺産分割の時です。
両パートナーの家族間が円満であれば、それ程問題になりません。
問題はやはり、家族間の意思疎通ができていない場合に発生します。
以下、養子縁組をした場合の、相続・遺産分割の問題点について、説明します。
養親(年の上のパートナー)が死亡した場合
年の上のパートナー(以下、養親)が死亡した場合、年の下のパートナー(以下、養子)が、養親の全て財産を相続します。
公正証書遺言を交わさなくても、子である養子が全ての財産を自然に相続します。
また、同性パートナー間で公正証書遺言により相続した場合、相続税が20%加算されます。
しかし、養子になった場合、実子となるため、相続税の加算はありません。
一見、相続の問題は解決するように思えますが、上記だけで解決しません。
養子縁組をしていない場合、本来、養親の親や兄弟が、その財産を相続します。
養子縁組により、養子が財産を相続したのなら、彼らはいい思いはしません。
パートナーを全く紹介していない場合、両親or兄弟とパートナーが、対立してしまうことも。
家族間の不仲、コミュニケーションが無い場合、養子縁組そのものが大きな問題になります。
結局のところ、お互いの家族間のコミュニケーションが、最も重要です。
養子(年の下のパートナー)が死亡した場合
LGBTカップルが養子縁組をした場合、養親と養子の年齢差がない場合が想定されます。
よって、先に養子が死亡することも、自然に考えられます。
養子が先に死亡した場合、当然、養親が相続人になります。
しかし、養子の実の両親が生きている場合、実の両親も相続人になります。
例え養子縁組をしたとしても、普通養子縁組は、元の親子関係は断絶しません。
やはり家族間が不仲、コミュニケーション不足の場合、問題になります。
養子縁組をしたことを伝えてない場合、両親は心穏やかでないでしょう。
やはり、パートナーのお互いの家族間のコミュニケーションが、最も重要になります。
遺言公正証書、任意後見人契約がベスト
婚姻制度がないLGBTカップルの場合、遺言公正証書と任意後見人契約がベストです。
また、居住地の市町村でパートナーシップ制度がある場合、積極的に利用すべきです。
しかし、養子縁組は、僕らが望む趣旨から明らかに外れます。
養子縁組では相続問題は解決できず、かえって家族間の問題を複雑にするおそれもあります。
遺言公正証書、任意後見人契約を鉄則とし、家族間のコミュニケーションと理解を深めることが、最も有効だと当事者として考えています。
根拠法令
相続税法第15条(遺産に係る基礎控除)
相続税法第17条(相続税額の加算)
相続税法第63条(相続人の数に算入される養子の数の否認)
まとめ
今回は、LGBTカップルの養子縁組の注意点について、ザックリ説明しました。
LGBTカップルの話題では、養子縁組がよく登場します。
しかし、個人的にあまりお薦めできる制度ではありません。
勝手に養子縁組をした場合、むしろ、親族間の反感を招くおそれがあります。
また、養子縁組をした場合、解消した場合であっても、婚姻することはできないなど、今後同性婚が実現した場合のデメリットもあります。
制度に翻弄されるのではなく、家族間のコミュニケーションを深めることが、まずは僕らが進んですべきことだと考えています。