LGBTの生命保険契約の留意点。知っておくべき生命保険契約と遺留分の関係。

LGBTカップル間がお互いに財産を遺す方法として、まず考えられることは生命保険金。

 

生前贈与加算や2割加算対象になる、生保非課税適用不可のデメリットがあります。

 

しかし、確実に財産を遺す方法として、非常に有効な手段です。

 

ただし、両親と仲が悪い場合、遺留分の問題について、知っておく必要があります。

 

今回は、LGBTの生命保険契約について、知っておくべき遺留分との関係をザックリ説明します。

 

 

 

all paints by Ryusuke Endo

 

生命保険金は原則、遺留分から除外される

親族間で相続の争いが発生した場合、遺留分が問題になります。

 

被相続人の全ての財産、また相続人等が被相続人から生前受けた贈与を合算し、遺留分基礎財産価額を算出します。

 

ただし、原則、生命保険金は遺留分の対象になりません。

 

生命保険金は、遺産分割対象財産から除外されるように、受取人固有の財産です。

 

生命保険金は、遺留分対象財産からも除外され、確実に財産を遺す方法として有効です。

 

 

 

 

ゲイである僕自身も、相方とお互いに生命保険金を結び、保険金受取人指定しています。

 

ただし、あらゆる状況下において、生命保険金が遺留分から除外されるわけではありません。

 

相続人間において、明らかに不合理とされる特段の事情がある場合です。

 

特段の事情が認定される場合、生命保険金も遺留分対象財産に含まれることがあります。

 

生命保険金が遺留分に含まれた事例

相続人間において、不合理とされる特段の事情とは、例えば、以下のような場合です。

 

【例:父死亡時に相続財産なし 子Cに死亡保険金1億円】

 

 

 

 

 

父には遺産がない為、子3名に遺産相続はありません。

 

しかし、子Cだけは、死亡保険金を受け取ることができます。

 

このような場合、A、B、Cの相続人間において、明らかに差があります。

 

過去の判例では、著しく不合理とされ、生命保険金が遺留分の対象とされたことがあります。

 

そして、上記の状況がLGBTカップル間において、該当するかどうかです。

 

生命保険金受取人が相続人以外(LGBT)の場合

LGBTカップル間の場合でも、お互いに生命保険金受取人指定をすることが可能です。

 

ただし、同性カップルは、自然に相続人になることはできません。

 

よって、相続人以外の人(LGBTカップル)を、生命保険受取人に指定することになります。

 

例えば、以外のような場合が想定されます。

 

【例:相方A死亡時に相続財産なし 相方Bに死亡保険金1億円】

 

 

 

 

 

相方Aには遺産がない為、Bは遺言書を交わしていても、遺産相続はありません。

 

当然、相方Aの両親は存命でも、遺留分を請求する財産がありません。

 

一方で、相続人ではない相方Bは、死亡保険金を受け取ることができます。

 

このような場合、相続人であるAの両親と、相続人でない相方Bの間において、不合理とされるかどうかです。

 

Aの両親と相方Bは相続人間ではないため、先述の事例とは人間関係が異なります。

 

しかし、相続人以外のBが保険金を受領する一方、遺留分権利者は、遺産を受け取ることができません。

 

不合理とされる特段の事情に該当すると、相方Bが受領した保険金も、遺留分の対象とされてしまう場合があります。

 

LGBT間で生命保険契約をした場合、遺留分侵害額請求されるリスクを、必ず想定しておく必要があります。

 

遺留分を請求されない対処法はだた1つだけ

LGBTパートナーの場合、自然に遺産を相続させることはできません。

 

その為には、生命保険契約と包括遺贈による遺言公正証書が必須です。

 

僕自身も、その2点を契約・作成しています。

 

しかし、遺留分権利者である両親は、難色を示すことが考えられます。

 

その為には、親族関係を円満にしておくことが、最も重要です。

 

両親に言いにくい、言いたくない、仲が悪くなってしまい言えない。

 

そんなLGBTの方は珍しくありません。

 

しかし、LGBTに限らず、相続係争事件の多くは、親族間の不和が原因です。

 

生命保険契約と遺言公正証書を作成したのなら、遺留分を請求されないよう、家族関係を仲良く円滑にしておく事が、最も効果的な対策です。

 

LGBTカップルの場合、家族間の不和という問題から逃げがちです。

 

これは、僕自身にもいえることです。

 

しかし、相方との将来を考えるのであれば、やはり真剣に向き合うべきです。

 

生命保険契約と遺言公正証書を結んだのなら、一度、面と向かって、家族に話してみましょう。

 

相方を守るために、自ら家族と向き合ってみましょう。

 

根拠法令

民法第903条(特別受益者の相続分)

民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)

民法第1043条(遺留分を算定するための財産の価額)

民法第1046条(遺留分侵害額の請求)

まとめ

LGBTカップル間の相続問題は、まだ判例や前提がなく、未知なる部分が多いと感じます。

 

しかし、今後は確実に、同性カップルで生涯を共にするLGBTが増加するはずです。

 

その時の為に、様々なリスクを知っておくべきです。

 

そして何より、家族間でコミュニケーションを取ることが、揉め事を無くす最も最良の方法です。