3社合併が行われる場合の欠損金の引継ぎ制限について(吸収・新設合併)

合併が行われる場合、通常は2社間における合併が想定されます。

 

吸収合併であれば、消滅法人と存続法人、新設合併であれば、消滅法人同士の2社が合併の当事者と想定されます。

 

しかし、複数のグループ会社を保有するオーナーは、時々3社まとめて合併を試みることがあります。

 

今回は、3社合併が行われる場合の欠損金引継ぎ要件について、ザックリ基本的事項を説明します。

(※以下の合併は、みなし共同事業要件を満たさない合併とします。)

 

 

 

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3社間の吸収合併の適格・欠損金引継ぎ判定

税務上、3社間の吸収合併は、2社間の吸収合併が2回行われたと見なされます。

 

下記のモデルの場合、A社とB社、A社とC社において、それぞれ吸収合併があったとみなします。

 

よって、適格要件及び欠損金引継制限の判定は、それぞれA社とB社間、A社とC社間において、別個で判定する必要があります。

 

 

 

 

欠損金引継の条件は、通常の吸収合併と変わることなく下記の通りです。

 

 

記の日付の内、最も遅い日から支配関係が継続していること。

・適格合併の日の5年前の日

・合併法人の設立の日

・被合併法人の設立の日

 

 

以下、3社間の吸収合併の適格・欠損金引継ぎ判定について、具体的な事例で説明します。

 

具体例:3社間の吸収合併

・2017年1月A社が他者よりB社株式を100%取得。(欠損金あり)

・2010年1月A社100%出資でC社を設立。(欠損金あり)

・2020年1月にA社がB社とC社を吸収合併。

・A社、B社、C社ともに2015年以前に設立。

 

 

下記のモデルを想定し、以下ザックリ説明します。

 

 

 

 

 

A社B社間の判定

A社B社間において、欠損金引継要件の最も日付が遅い日は、合併があった日の5年前の日(2015年1月1日)です。

 

B社との支配関係発生日は2017年1月である為、2015年1月1日より支配関係は継続していません。

 

よって、B社の欠損金引継制限を受けます。

 

B社の欠損金の内、A社と支配関係が生じた事業年度前(2016年12月以前)の欠損金が切り捨てられます。

 

 

 

 

 

A社C社間の判定

A社C社間において、欠損金引継要件の最も日付が遅い日は、合併があった日の5年前の日(2015年1月1日)です。

 

C社との支配関係発生日は2010年1月である為、2015年1月1日より支配関係は継続しています。

 

よって、C社の欠損金引継制限はありません。

 

 

 

 

A社の欠損金使用制限

上記のモデルの場合、B社の欠損金引継制限が適用されます。

 

よって、同時にA社が保有する欠損金についても、使用制限を受ける事になります。

 

具体例には、B社と支配関係が生じた事業年度前のA社の欠損金が切り捨てられます。

 

 

 

 

 

3社間の新設合併の適格・欠損金引継ぎ判定

税務上、3社間の新設合併は、他の被合併法人が2社ある新設合併とみなされます。

 

A社の立場(被合併法人)からは、B社とC社が他の被合併法人になります。

 

 

 

 

 

 

上記のモデルの場合、A社の適格要件及び欠損金引継制限の判定は、A社とB社間、A社とC社間で行います。

 

同様にB社の判定は、B社とC社間、B社とA社間において、またC社の判定は、C 社とA社間、C社とB社間で判定します。

 

 

 

 

 

欠損金引継の条件は、通常の新設合併と変わることなく下記の通りです。

 

下記の日付の内、最も遅い日から支配関係が継続していること。

・適格合併の日の5年前の日

・被合併法人の設立の日

・他の被合併法人の設立の日

 

以下、3社間の新設合併の欠損金引継ぎ判定について、具体的な事例で説明します。

 

3社間の新設合併の具体例

・2010年1月オーナーが100%出資でA社設立。(欠損金あり)

・2015年1月オーナーが他社よりB社株式を100%取得。(欠損金あり)

・2017年1月オーナーが他社よりC社株式を100%取得。(欠損金あり)

・2020年1月にA社、B社、C社が消滅し新設合併。

・A社、B社、C社ともに2015年以前に設立。

 

 

下記のモデルを想定し、以下A社を例として欠損金引継ぎの判定を行います。

 

A社の欠損金が新設法人に引き継がれるか否かの判定を行います。

 

 

 

 

 

 

A社B社間における判定

A社B社間において、欠損金引継要件の最も日付が遅い日は、合併があった日の5年前の日(2015年1月1日)です。

 

B社との支配関係発生日は2013年1月である為、2015年1月1日より支配関係は継続しています。

 

A社B社間の判定において、A社が保有する欠損金の内、新設法人へ切り捨てられる金額はありません。

 

 

 

A社C社間の判定

A社C社間において、欠損金引継要件の最も日付が遅い日は、合併があった日の5年前の日(2015年1月1日)です。

 

C社との支配関係発生日は2017年1月である為、2015年1月1日より支配関係は継続していません。

 

よって、A社の欠損金の内、支配関係事業年度前(2016年12月以前)に生じた欠損金について引継制限を受けます。

 

 

 

 

 

ここでは割愛しますが、同様の判定をB社とC社においても行います。

 

根拠法令

法人税法第57条第3項(青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し)

法人税法施行令112第4項、第9項(適格合併等による欠損金の引継ぎ等)

法人税法施行令113(引継対象外未処理欠損金額の計算に係る特例)

法人税法基本通達12-1-4(法人を新設する適格合併に係る被合併法人が3以上ある場合の取扱い)

法人税法基本通達12-1-5 (最後に支配関係があることとなった日)

まとめ

今回は、3社間で行われる吸収・新設合併の欠損金引継ぎの判定方法について、ザックリ説明しました。

 

基本的には2社間で行われる判定方法と変わりありません。

 

しかし、判定回数増える為、時が経過すると、どのような判定をしたのかわからなくなることがあります。

 

組織再編の際は、過去どのような判定と再編を行ったのか、編制の履歴を作成しておく必要があります。