外貨預金を日本円に換金した場合の為替差損益の計算方法。
円安の進行により、外貨預金・定期を、日本円に換金する方が増えています。
外貨預金の為替差益は、雑所得として所得税の課税対象にです。
源泉徴収は行われないため、自身で為替差益を算出し、確定申告する必要があります。
過去複数回に預け入れた外貨預金・定期の為替差益の計算方法について、疑問に思う方が多いようです。
今回は、個人が外貨預金を円に換金した場合の、為替差損益の算出方法について、ザックリ説明します。
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元利継続外貨預金の利息
外貨定期を契約されている方の場合、定期利息は外貨定期に元本に組み入れて継続する方が殆どです。
定期残高は、当初預け入れたドル建元本+ドル建外貨定期利息である事が一般的です。
最終的に円に換金する場合、元本に組み入れた利息部分について、為替差益を認識すべきか迷う方もいるようです。
しかし、元本に組み入れた利息も含めて円換算し、為替差益を認識します。
外貨定期利息を、一旦利息支払い時の円レートにより日本円で支払いを受け、即座に外貨定期に預け入れたと考えます。
2回以上外貨預金・定期を預け入れた場合
外貨預金・定期口座(以下、外貨預金等)を有する方の場合、2回以上外貨預金に預け入れをする方が殆どです。
複数回外貨預金等に預け入れ、その一部を日本円に換金した場合、いつの預け入れ部分を日本円に換金したのか?
疑問に感じる方が多いようです。
2回以上外貨預金等に預け入れた場合、外貨預金元帳を作成し、外貨の平均レートを算出します。
平均レート算出方法は、総平均法に準ずる方法(いわゆる移動平均法)です。
外貨預金元帳作成の為には、以下のデータが必要です。
① 外貨預金を預入時のドル建金額
② 預入時の日本円換算額
③ 払出時(日本円換金時)の預金払出明細書
①、②は通帳等により把握し、不明な場合は金融機関に問い合わせます。
預入時の日本円換算額が不明な場合、当時の円相場(仲値TTB)で算出します。
以下、外貨預金元帳を作成し、雑所得を算出します。
2回以上預入した時の外貨預金元帳の作成
以下の取引を行った順に、外貨預金元帳を作成します。
元帳は下記のようにシンプルでOKです。
以下の取引を順番に元帳に記入します。
① 1/1 100$預入(1$=100円)
② 2/1 100$預入(1$=105円)
② 3/1 50$預入 (1$=110円)
④ 4/1 50$利息組入(1$=103円)
⑤ 6/1 100$日本円に換金(1$=125円)
① 1/1 100$預入(1$=100円)の取引を記入します。
② 2/1 100$預入(1$=105円)の取引を記入します。
下記のように、2回以上外貨預金を購入した場合、残帳簿価格の円レートは、1/1と2/1の平均円単価となります。
③ 3/1 50$預入 (1$=110円)の取引を、②と同様に記入します。
④ 4/1 50$利息組入(1$=103円)の取引を記入します。
利息は一度受け取って、即座に預け入れたと見なします。
⑤ 6/1 100$日本円に換金(1$=125円)に取引を記入します。
払出単価は、直前の残帳簿価額の平均円単価です。
100$を円に換金すると、12,500円(125$×100円)が収入になります。
一方、取得費は10,400円です。(100$×104円)
よって、為替差益は12,500-10,400円=2,100円と計算します。
根拠法令
所得税法第57条の3《外貨建取引の換算》
所得税法施行令第118条《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》第1項
所得税法第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》第3項
所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項
所得税法施行令第105条《有価証券の評価の方法》第1項第1号(総平均法)
まとめ
今回は、外貨預金を円に換金した場合の為替差損益の計算について、ざっくり説明しました。
複数回外貨預金に預け入れをしている場合、外貨預金元帳を作成し、残高と平均単価を把握する必要があります。
特に一部日本円に換金した場合、平均単価の算出は非常に重要になります。
外貨預金を日本円に換金しようと考えている方は、一度チェックをしてみる必要があります。