特定口座の「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の課税方式と申告方法の違いについて。

e-taxの普及・浸透により、株式譲渡や配当の申告を自身で行う方が一般的になりました。

 

中でも特定口座の配当は、非常に簡単に申告することが可能です。

 

しかし、出力された申告書が正しいのか悩む方も少なくありません。

 

とりわけ、特定口座の配当について、総合課税を選択したにもかかわらず、申告分離も適用されたという声をしばしば耳にします。

 

今回は、特定口座の配当のうち、「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の申告方法について、ザックリ説明します。

 

 

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特定口座の基本的な申告ルール

特定口座で配当を受け取る場合、通常、確定申告不要です。

 

確定申告する or しないは、納税者次第です。

 

 

 

 

ただし、配当控除や外国税額控除を適用する場合、必ず確定申告が必要です。

 

申告しなかった場合、申告不要制度を採用したことになります。

 

後から更正の請求など行うことはできません。

 

 

 

 

更に、配当控除を適用する場合、必ず総合課税(第1表)で確定申告する必要があります。

 

また、外国税額控除は、総合課税(第1表)でも申告分離課税(第3表)でも適用可能です。

 

 

 

 

しかし、特定口座の配当について、総合課税(第1表)を選択したにもかかわらず、申告分離課税(第3表)が作成されたという相談がしばしばあります。

 

特定口座の配当所得の申告は、総合課税を選択した場合も、総合課税(第1表)と申告分離課税(第3表)の申告書が作成されることがあります。

 

「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の双方に金額等の記載がある場合です。

 

その理由は、「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の取り扱いが異なるからです。

 

これら2つは分けて考える必要があります。

 

特定口座の「特定上場株式等の配当」

特定口座のうち、「特定上場株式等の配当」とは、いわゆる配当所得のことです。

 

主に、国内上場株式の配当金、国内・国外株式投資信託等の配当金のことです。

 

「特定上場株式等の配当」は、総合課税 or 申告分離課税のいずれも適用が可能です。

 

 

 

 

また、「特定上場株式等の配当」のうち、配当控除の対象になる配当所得についてのみ、配当控除適用が可能です。

 

配当控除を適用する場合、必ず総合課税(第1表)で確定申告をします。

 

特定口座の「上記以外のもの」

特定口座のうち、「上記以外のもの」とは、その殆どが利子所得です。(一部、配当所得を含みます。)

 

ポピュラーなものは、MMF、MRF、外貨建てMMF等の公社債投資信託です。

 

また、国内の公債や社債などです。

 

これらは元々、配当所得ではなく利子所得です。

 

よって、配当ではない「上記以外のもの」に、配当控除の適用はありません。

 

また、主に利子所得である「上記以外のもの」の課税方式は、申告分離課税のみです。

 

総合課税を選択することはできません。

 

 

 

 

例え「特定上場株式等の配当」について総合課税を選択した場合であっても、「上記以外のもの」は、必然的に申告分離課税(第3表)が適用されます。

 

「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の申告

配当控除を適用するために、特定口座の配当を確定申告する場合、「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」に記載があれば、第1表と第3表が作成されます。

 

例えば、以下は特定口座内で、国内株式とMMF(公社債投資信託)を受け取る場合です。

 

 

 

 

国内株式の配当金300,000円は、「特定上場株式等の配当」に記載されています。

 

一方、MMFの利子100,000円は、「上記以外のもの」に記載されています。

 

 

 

 

国内株式配当金300,000円について、配当控除を適用するのであれば、「特定上場株式等の配当」は、総合課税により第1表に記載されます。

 

一方、MMFの利子100,000円は、申告分離課税のみですので、「上記以外のもの」は、第3表に記載されます。

 

 

 

 

配当控除の対象になる配当金は、「特定上場株式等の配当」の記載された配当金のみです。

 

「上記以外のもの」には、配当控除の適用はありません。

 

第1表と第3表の双方が作成され、誤りではないのか?と疑問に思う方います。

 

特定口座を確定申告する場合、まず「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の違いを理解する必要があります。

 

その上で、課税方式を税負担を検討した方がベターです。

 

根拠法令

租税特別措置法第8条の4(上場株式等に係る配当所得等の課税の特例)

租税特別措置法第37条の11の6

(源泉徴収選択口座内配当等に係る所得計算及び源泉徴収等の特例)

まとめ

今回は、特定口座の配当の「特定上場株式等の配当」と「上記以外のもの」の課税方式・申告方法の違いについて、ザックリ説明しました。

 

非常に基本的な部分ですが、理解されないまま申告をする方が、まだまだ大勢います。

 

株式譲渡・配当の申告は複雑ですが、少なくとも、特定口座の情報や課税方式について、理解しておく方がベターです。