上場株式等の譲渡損失の申告を忘れた場合の期限後申告と更正の請求。

現在、株式投資を行う方の殆どは、特定口座(源泉徴収あり)を利用されています。

 

しかし、長年、投資をしている方には、制度変更時、特定口座移管を失念したり、一般口座で運用を継続している方もいます。

 

また、源泉徴収なしの特定口座を利用する方も、まだまだいらっしゃいます。

 

これらの場合、自分で記帳を行い、譲渡損失を計算することになります。

 

しかし、株式譲渡損失の申告忘れ等をしばしば耳にします。

 

譲渡損失の繰越しを失念した場合でも、期限後申告や更正の請求が可能な場合もあります。

 

今回は、上場株式等の譲渡損失の期限後申告や更正の請求について、ザックリ説明します。

 

なお、譲渡損失の発生年により、期限後申告や更正の請求の取り扱いが異なります。

 

自身の状況を、順序立てて考える必要があります。

 

 

 

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上場株式等の譲渡損失の確定申告の基本

上場株式等の譲渡損失は、確定申告することで、以後3年間の繰越しが可能です。

 

譲渡損失の繰越しは、必ず毎年、連続して損失の繰越の確定申告が必要です。

 

譲渡損失は、利子・配当・株式譲渡益と相殺可能であり、失念は避けたいところです。

 

ところが、その損失の繰越を忘れたり、確定申告自体を忘れる方もいます。

 

しかし、確定申告を忘れた場合でも、期限後申告や更正の請求により、譲渡損失の繰越が可能な場合があります。

 

一方、毎年連続して、譲渡損失を繰越す確定申告が条件であることは、変わりありません。

 

即ち、連続して譲渡損失の確定申告をする為には、本年分の確定申告までに、期限後申告や更正の請求を行う必要があります。

 

本年分の確定申告までに期限後申告・更正の請求を行えば、譲渡損失の確定申告が連続します。

 

 

 

 

 

 

しかし、本年分の確定申告をした後に期限後申告や更正の請求をした場合、連続しないため、譲渡損失の繰越はできません。

 

 

 

 

 

 

また、源泉徴収ありの特定口座の場合、申告する or 申告しないは、納税者の自由です。

 

申告しなかった場合、必然的に、申告不要を選択したことになります。

 

一方、源泉徴収なしの特定口座や一般口座の場合、申告不要制度はなく、確定申告をする義務があります。

 

上記を踏まえ、上場株式等の譲渡損失の申告を忘れた場合の期限後申告や更正の請求について、説明をします。

 

①前年に譲渡損失の確定申告をしていない場合

本年分の確定申告の際、前年に譲渡損失の確定申告をしなかった事に気付く場合があります。

 

前年に譲渡損失の確定申告を失念した場合、前年分の確定申告をしていなければ、期限後申告により、譲渡損失の繰越が可能です。

 

期限後申告とは、確定申告をしていない方が、3月16日以降に行う申告のことです。

 

本年分の確定申告までに、期限後申告をする必要があります。

 

特定口座(源泉徴収あり)or(源泉徴収なし)、一般口座のいずれの場合も、期限後申告による対応が可能です。

 

また、この場合の譲渡損失とは、前年発生分や前々年からの譲渡損失のことをいいます。

 

 

 

 

 

 

ただし、期限後申告は、前年分の確定申告を、一切していない場合に限ります。

 

例えば、医療費やその他の所得の確定申告をした場合、期限後申告はできません。

 

 

 

 

 

 

本年分の確定申告を済ませた後の場合、例え前年分を期限後申告しても、前年の譲渡損失の繰越しはできません。

 

②本年分の譲渡損失の確定申告をしていない場合

本年分の確定申告期限後、譲渡損失の繰越を失念した事に気付く場合があります。

 

本年分の譲渡損失の確定申告を忘れた場合も、期限後申告により、譲渡損失の繰越が可能です。

 

本年分の申告忘れに気付いた場合、少なくとも、翌年分の確定申告をする時までに、期限後申告をする必要があります。

 

 

 

 

 

 

特定口座(源泉徴収あり)or(源泉徴収なし)、一般口座のいずれの場合も、期限後申告による対応が可能です。

 

また、前述の①と同様、本年分の確定申告を、一切していないことが条件です。

 

例えば、医療費やその他の所得の確定申告をしている場合、期限後申告はできません。

 

 

 

 

③前年分の確定申告で前年生じた譲渡損失の繰越を忘れた場合

本年に株式譲渡益が乗じ、前年発生の譲渡損失と相殺しようとしたところ、譲渡損失の繰越を忘れていたことに気付く場合があります。

 

前年分の確定申告で、前年中に発生した譲渡損失の繰越を忘れ、確定申告をした場合です。

 

前年発生した譲渡損失の繰越を失念し、一旦、確定申告を済ませた場合でも、更正の請求により、譲渡損失の復活が可能な場合があります。

 

特定口座(源泉徴収なし)また、一般口座を利用の場合、更正の請求により、譲渡損失の繰越が可能です。

 

 

 

 

 

 

 

ただし、本年分の確定申告をするまでに、更正の請求をする必要があります。

 

本年分の確定申告後は、更正の請求はできません。

 

 

 

 

 

 

しかし、源泉徴収ありの特定口座の場合、申告不要制度を採用した事となり、更正の請求をすることはできません。

 

④前年分の確定申告で前々年までの譲渡損失の繰越を忘れた場合

本年に株式譲渡益が乗じ、前々年までの譲渡損失繰越分と相殺しようとしたところ、譲渡損失の繰越を忘れていたことに気付く場合があります。

 

前年分の確定申告で、前々年までの譲渡損失の繰越を忘れ、確定申告をしてしまった場合です。

 

前々年の譲渡損失の繰越を忘れて、一旦、前年の確定申告をしてしまった場合、更正の請求により、譲渡損失を復活させることはできません。

 

前々年と前年において、譲渡損失を繰越す確定申告が連続していないからです。

 

 

 

 

 

 

特定口座(源泉徴収あり)or(源泉徴収なし)、一般口座のいずれの場合も、更正の請求はできません。

 

⑤譲渡損失の金額を間違えてしまった場合

源泉徴収なしの特定口座や、一般口座を利用者の場合、譲渡損失等は自身で計算する必要があります。

 

総平均法に準ずる方法で、株式等の単価を算出します。

 

しかし、外貨株式等の場合は、その平均単価を誤ることは少なくありません。

 

そして、譲渡損失の金額を計算相違してしまうことがあります。

 

この場合、単純な計算相違である為、更正の請求が可能です。

 

 

 

 

 

 

本年分の確定申告をした後でも、更正の請求は可能です。

 

根拠法令

租税特別措置法第37条の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)

国税通則法第23条(更正の請求)

租税特別措置法通達第37条の12の2

(更正の請求による更正により上場株式等に係る譲渡損失の金額があることとなった場合 )

まとめ

今回は、上場株式等の譲渡損失の申告を忘れた場合の期限後申告と更正の請求について、ザックリ説明しました。

 

いくつかパターンが存在するため、自分自身の状況を正確に把握する必要があります。

 

譲渡損失の申告もれは、更正の請求や期限後申告はできない。と思っている方も多い傾向があります。

 

改めて、期限後申告や更正の請求ができる場合があることを、留意しておく必要があります。