同性パートナーが若くして亡くなった場合に想定される相続問題。遺言や遺留分侵害額請求権を知っておこう。

2010年以降、急速にSNS等による発信が発達。

 

同性カップルで人生を共するカップルが、あちらこちらにいるようです。

 

40歳を超えたカップルでは、10年以上共に人生を送るカップルも少なくありません。

 

しかし、人生は何が起こるのかわからず、若くしてパートナーが亡くなってしまう方も。

 

とりわけ40歳前後の方の場合、その両親が存命ということは珍しくありません。

 

今回は、同性パートナーが若くして亡くなった場合に想定される相続問題について、ザックリ説明します。

 

 

 

all paints by Ryusuke Endo

同性パートナーの相続と遺留分の問題

同性パートナー間でも40歳を超えると、遺言について考える方が増えるようです。

 

相方と15年人生を共にするゲイ当事者である僕(筆者)も、相方と公正証書遺言を締結済です。

 

同性パートナー間の場合、遺言は全部包括遺贈による公正証書が鉄則です。

 

全部包括遺贈とは、マイナス財産を含む全ての財産をパートナーに遺すという意思表示です。

 

親族に該当しない同性パートナーは、この方法でなければ財産を安全に遺せません。

 

しかし、そこには遺留分という問題が付きまといます。

 

遺留分とは、相続人は受け取るべき最低限の権利です。

 

遺言によりパートナーに全ての財産を遺す意思表示をしても、遺留分という問題が残ります。

 

同性パートナーの場合、遺留分権者は、パートナーの両親です。

(※兄弟姉妹に遺留分はありません。)

 

 

 

 

40歳前後では、両親が存命であることが多い傾向にあります。

 

万が一、若くしてパートナーが亡くなった場合、相続人はその両親です。

 

パートナーが財産を包括遺贈により取得した場合、その両親からの遺留分を請求されることも考えられます。

 

同性パートナー間で遺言を交わす場合、遺留分について知っておく必要があります。

 

両親の遺留分と遺留分侵害額請求権

パートナーの両親が存命の場合、両親の遺留分は合計1/3です。

 

例えパートナーと公正証書を交わしても、遺産の1/3は両親が相続する権利(遺留分侵害額請求権)があります。

 

 

 

 

 

そして、遺留分侵害額請求権とは、金銭による支払いを請求する権利です。

 

即ち、遺留分相当額をパートナーの両親に対し、金銭で支払う必要があります。

 

 

 

 

 

 

パートナーの遺産に、十分な現金預金がない場合、金銭支払いが大きな負担になります。

 

公正証書遺言を交わす場合は、必ず遺留分の問題について知っておく必要があります。

 

遺言書に関する信ぴょう性の問題

パートナーが若くして亡くなる場合、その両親が存命なことが考えられます。

 

その場合、パートナーの両親が法定相続人です。

 

問題が発生する場合は、両親との折り合いが悪い、音信普通、パートナーのお互いの家族と意思疎通がない場合です。

 

折り合いが悪い場合、遺言書を交わしていても、その信ぴょう性を疑われます。

 

通常、同性パートナー間の場合、全ての財産をパートナーに遺すことが殆どです。

 

直筆遺言の場合、本人の意思よるものなのか、その信ぴょう性が問題になります。

 

折り合いが悪い家族の場合、疑われても仕方ありません。

 

それらを回避すべく、公証人役場で公正証書遺言を作成します。

 

公正証書遺言であれば、公証人が証人となり遺言書が作成されます。

 

公証人役場で保管されるため、その信ぴょう性を疑う余地がありません。

 

遺言書に関する効力の問題

被相続人の遺言書がある場合、相続は遺言書に従い遺産分割が進められます。

 

しかし、必ずしも遺言書に従う必要はありません。

 

共同相続人全員の合意により、遺言書と異なる遺産分割が可能です。

 

折り合いが悪い両親の場合、遺言書と異なる遺産分割を要求されることも考えられます。

 

しかし、遺言書で全ての財産をパートナーの遺すとしている場合、当該パートナーが包括受遺者になります。

 

包括受遺者には、相続人と同等の権利があるとされています。

 

例え両親が法定相続人であっても、遺言書と異なる遺産分割を進めるためには、受遺者であるパートナーの合意が必要です。

 

相続人に勝手に遺産分割されない為にも、パートナー包括受遺者とする公証証書遺言は、非常に重要な意味も持ちます。

 

問題を起こさないための秘訣は1つだけ

前述の問題回避のためには、お互いのパートナーと両親とのコミュニケーションが不可欠です。

 

言い換えれば、お互いの両親とのコミュニケーションに問題なければ、まず遺留分侵害額請求など発生しません。

 

僕らゲイカップルにとって、お互いの両親との意思疎通は、最大ともいえるハードルです。

 

しかし、社会や世の中が僕らに対して抱く考えが変わりつつあっても、僕ら自身が怖がっていては、本当の意味で何も変わりません。

 

来たる相続の問題を回避するためにも、僕ら自身が勇気をもって一歩踏み出す努力も必要だと考えられます。

根拠法令

民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合)

民法第1046条第1項(遺留分侵害額の請求)

まとめ

今回は、同性パートナーが若くして亡くなった場合に想定される相続問題について、ザックリ説明しました。

 

全国でパートナーシップが導入されていますが、法的拘束力はありません。

 

同性カップルが共に生活をするのであれば、公正証書遺言は欠かすことができません。

 

そして、最も困難だと想定される、お互いの両親とのコミュニケーションを円滑にしておく必要があります。

 

少なくとも、遺留分侵害額請求という悲しい争いを避けるためにも、自身で家族に告げておくことが肝要です。