個人が事業用資産を家事専用にした場合の消費税のみなし譲渡

フリーランスや個人事業主の場合、プライベート車両や自宅の一部を事業に使用していることがあります。

 

プライベートと事業分を按分して減価償却費として経費計上したり、事業用資産への転用の計算などが行われます。

 

一方で、事業用資産として減価償却費を計上した資産を、100%プライベートに転用する事もあります。

 

この場合には、自分から自分に資産を譲渡したとみなされ、いわゆる消費税のみなし譲渡課税が発生します。

 

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消費税のみなし譲渡とは

消費税において、事業用資産を家事使用した場合は、時価で譲渡があったものとされます。

 

事業用として減価償却していた資産(以下、事業用資産)を、プライベート専用に転用した場合が、正にその家事使用に該当します。

 

例えば、簿価1,000,000円の車両を、事業用からプライベート専用にした場合、時価で自分に譲渡したことになります。

 

この時、自分に対する譲渡には、消費税が課されることになります。

 

 

 

 

車両や自宅の一部のように、時価が定かではない場合は、その時の帳簿価格でも問題ないことが多い傾向にあります。

 

帳簿価格1,000,000円を時価とした場合、消費税のみなし譲渡が適用されると、下記の処理を起こすこととなります。

 

 

 

 

 

免税事業者の方の場合、単純に「事業主貸」とするのではなく、消費税の納税事務者の判定となる課税売上と認識する必要があります。

 

一方、課税事業者の場合、課税売上に含め、仮受消費税の発生を認識する必要がります。

 

事業の廃業時に注意

消費税のみなし譲渡の家事使用には、個人事業主が事業を廃止した場合も該当します。

 

事業廃止により、事業用資産は、全てプライベート専用とされるからです。

 

ただし、プライベートでは使用する事が考えられない機械装置や専門機器類ついては、家事使用に該当しません。

 

事業廃業時において消費税の課税事業者である場合、みなし譲渡の適用により、プライベート専用とする資産について、消費税の発生を忘れないよう留意する必要があります。

消費税のみなし譲渡が存在する理由

実際に譲渡があったわけではないにもかかわらず、消費税の課税売上を認識する理由は、消費税の課税もれを防ぐ理由があります。

 

事業用資産(この場合は車両)を販売店等へ譲渡した場合、消費税が課税されます。

 

 

 

 

 

しかし、プライベートで使用する資産を譲渡しても、生活用動産の譲渡は消費税は課税されません。

 

 

 

 

 

 

よって、事業用資産を一度プライベート専用とし、その後、生活用動産として譲渡する事で、消費税の課税逃れが可能となります。

 

 

 

 

 

これを防ぐため、事業用資産を家事使用(プライベート専用)した場合、消費税が課税されることとされています。

 

事業廃業時、消費税の課税もれとして、国からの指摘があった有名な項目です。

 

事業用資産をプライベートへ転用した時、また事業廃業時には改めて注意が必要です。

根拠法令

消費税法第4条第5項第1号(課税の対象)

消費税法第28条第3項第1号(課税標準)

消費税法基本通達5-3-1(家事消費等の意義)

まとめ

今回は忘れすい消費税のみなし譲渡について、サックリ説明しました。

 

免税事業者で売上が9,000,000円付近の場合、みなし譲渡によりウッカリ課税事業者となる場合もあります。

 

また、課税事業者の場合には、課税売上を認識する必要があります。

 

とりわけ、個人の事業廃業時には洩れやすいという指摘があったため、留意をする必要があります。