複数の社員で合同会社を会社設立する場合の注意点。

法人設立を考える時、気軽に選択可能な会社形態が合同会社です。

 

設立時の費用が安さと、原則、役員の任期不要がその理由です。

 

しかし、合同会社を選択する場合、その性質を理解した上で設立する必要があります。

 

設立が容易という理由だけで選択することはお薦めできません。

 

特に3名以上の複数名で設立する場合、面倒な手続きが必要になることもあります。

 

今回は、複数の社員で合同会社の設立の際に注意すべき点をザックリ説明します。

 

なお、ここでは便宜的に業務執行社員は役員、社員を出資者と表現しています。

 

 

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気楽に役員退任することはできない

複数人が出資し合同会社を設立した後、役員退任を希望する事態が発生することがあります。

 

家庭の事情、本人や家族の病気や転居、役員同士の方針・意見の相違など。

 

会社員の場合は、本業との兼ね合い(副業禁止)など。

 

実際に、役員を辞めたいという事態は、しばしば発生しうる出来事です。

 

しかし、合同会社の場合、原則として、役員=出資者です。

 

役員に就任する為には、法人に出資する必要があります。

 

また、法人に出資すると役員登記されます。

 

 

 

 

 

一方、役員退任をした場合は、出資者でなくなります。

 

法人から出資金(資本金)を払い戻してもらう必要があります。

 

 

 

 

ただし、出資金を払い戻す場合は、それまでに会社に蓄積された利益もセットになります。

 

そしてその利益とは、退任する役員の持分に該当する部分です。

 

 

 

 

一連の手続きとして、出資の払い戻しの税務計算や法人登記も必要です。

 

株式会社のように、単純に役員退任の登記だけで済みません。

 

なお、退任しても出資の払戻しを受けないことも可能です。

 

その場合、贈与の問題が生じる可能性がありますがここでは割愛します。

 

気楽に役員就任することはできない

会社が営業活動を行っていくにつれ、役員増員の必要性が生じる場合があります。

 

対外的に役員就任に迫られる場合や、既存の役員退任による内部的要因など様々です。

 

しかし、前述の場合と同様、合同会社の場合、原則、役員=出資です。

 

役員に就任する為には、法人に出資をする必要があります。

 

そして会社設立時とは異なり、その時の法人の時価=いわゆる株価で出資する必要があります。

 

例え当会社設立時の役員の出資が100,000円でも、新たに100,000円を出資して役員就任はできません。

 

一連の手続きとして、法人の時価=株価の算定が必要です。

 

 

 

 

会社の業績が良い場合は、株価も高い傾向があります。

 

その時の株価=時価で出資することになります。

 

定款で役員≠出資者と定めていなかった

合同会社の場合、原則、役員=出資者です。

 

しかし、役員が3名以上複数名の場合、定款で役員≠出資者と定めることも可能です。

 

出資者としての立場のみの場合、登記簿には役員登記されません。

 

 

 

 

一方、役員のみ退任し、出資者のみの立場になることも可能です。

 

役員退任をすることで、面倒な出資の払い戻しまでする必要はありません。

 

しかし、設立時に定款作成の際、最小限の必要事項しか定めていない場合が散見されます。

 

とりわけ、役員≠出資者と定めていない場合が多々あります。

 

設立時の定款は、絶対的必要事項だけでなく、任意事項について考慮する必要があります。

 

合同会社の性質を理解し、専門家から説明を受けて定款を作成することが肝要です。

 

根拠法令

会社法第590条(業務の執行)

会社法第591条(業務を執行する社員を定款で定めた場合)

会社法第611条(退社に伴う持分の払戻し)

まとめ

今回は複数の社員で合同会社を設立する場合の注意点について、ザックリ説明しました。

 

合同会社を選択する方は年々増加しています。

 

しかし、第3者同士が集まって法人を設立する場合、合同会社の特性を理解する必要があります。

 

費用面だけで合同会社を選択するのではなく、株式会社で設立することも念頭におくべきです。

 

また、後からの問題点の発生を防止するため、設立時は業務執行社員の定めなど、定款をじっくり吟味して作成した方がベターです。