期首から役員報酬を変更する場合の注意事項

法人が毎期決算後の検討事項の1つに、役員報酬の改定があります。

 

多くの場合、期首から3カ月以内に開催される定期株主総会等により、その金額が改定されます。

 

しかし、時には期首から変更を希望する会社も目にします。

 

役員報酬の改定はその時期を誤ると、大きなダメージがあります。

 

今回は、期首から役員報酬を変更する場合の注意事項について、ザックリ説明します。

 

なお、ここでは臨時改定事由と業績悪化事由は除きます。

 

 

 

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期首からの改定は定期同額給与

役員報酬を期首から改定する場合、通常は期首に臨時総会等を開催し、役員報酬改定の手続きが行われます。

 

期首に役員報酬を変更し、仮に12か月同額支給した場合、純然たる定期同額給与に該当します。

 

この場合、役員報酬が損金不算入になる余地はありません。

 

定期同額給与に該当するか否かは、同一事業年度内のみで判定することとされているからです。

 

 

 

 

ただし、期首から役員報酬を改定する場合、必ず留意しておく事項があります。

 

役員報酬改定時期は、毎期継続した所定の時期とされていること、また、期首改定と3か月以内の改定のダブル適用をしないことの2点です。

 

定期同額給与の改定は毎年継続した所定の時期

定期同額給与の要件として、役員報酬改定があった場合、その改定の時期は法令上、毎期継続する所定時期とされています。

 

その所定の時期がいつかは、法令に明記されていません。

 

しかし、常識的に考えるのであれば、期首から3カ月以内の定期株主総会等であると考えられます。

 

役員報酬の改定は、定期株主総会等の決議による改定が、最も自然な流れです。

 

 

 

 

期首から改定し1年間同額の場合、損金不算入の余地はありませんが、3か月以内に改定したことに変わりありません。

 

定期株主総会を待たず、期首から改定した場合、合理的な理由を備えておく必要があります。

 

また、定期株主総会等では期首に変更した役員報酬を追認し、議事録等を作成しておく必要があります。

 

そして期首から改定した場合は、その後12か月間、役員報酬を変更することがないよう注意する必要があります。

 

期首改定と3カ月以内改定をダブル適用しない

役員報酬を期首から改定した後、決算の動向を鑑み、更に定期株主総会等で役員報酬を変更しようとする法人もあります。

 

役員報酬を期首と定期株主総会等後にダブル改定し、結果的に期首から3カ月以内に2度役員報酬を改定をする場合です。

 

 

 

 

 

法令上、期首からの改定と3カ月以内の改定のダブル適用を不可とする規定はありません。

 

しかし、不自然な改定である事は言うまでもありません。

 

3か月以内の2度改定を行われた場合、そもそも1度目の改定が不可解な改定です。

 

避けるべき役員報酬の改定であることは、言うまでもありません。

 

役員報酬の改定は、第3者から見て不自然な改定にならないよう、注意する事が求められます。

 

役員報酬改定は自然な流れで行う

役員報酬を変更した場合、定期同額給与に該当する為には、毎期継続した所定時期による改定とされています。

 

期首から改定を行う場合でも、役員報酬の改定は、自然な流れで行うことが最もリスクがありません。

 

不自然な改定を行う場合、何かしらのやましい事実がつきまといます。

 

決算末日には翌期の役員報酬の金額をほぼ決定し、毎期継続して行われる定期株主総会等の時期に改定する方がベターです。

 

法令根拠

法人税法第34条(役員給与の損金不算入)

法人税法施行令第69条第1項第1号(定期同額給与の範囲等)

まとめ

今回は、期首から役員を改定する場合の注意事項について、ザックリ説明しました。

 

期首から改定して良いのか、また期首から改定し更に定期株主総会等で改定して問題がないか、未だに質問を受ける内容です。

 

役員報酬の改定は、不自然な改定にならないように留意し、毎期継続する所定の時期に改定するよう心がける必要があります。

 

改定の時期は定時株主総会により改定を基本とした方がベターです。