LGBTカップルの遺言書作成時の注意点。遺言書は全部包括遺贈で行おう。

長年連れ添った同性パートナーに財産を残したい。

 

急速に多様化が進む昨今、現実的な問題に悩む方も増加することでしょう。

 

相続人に該当しない同性パートナーには、遺言により財産を残す事が可能です。

 

遺贈とは、いわゆる遺言のことです。

 

しかし、単に遺言書を作成すれば良いわけではありません。

 

同性パートナーに財産を残す場合、全部包括遺贈を心がける必要があります。

 

今回は、同性パートナーの遺言書の作成ついて、ざっくり説明します。

 

なお、以下の遺言書は、公正証書遺言で作成することが前提です。

 

 

 

all paints by Ryusuke Endo

 

遺言書(遺贈)は包括遺贈と特定遺贈の2通り

同性パートナーは相続人ではないため、財産を残す場合は、遺言書でその意思表示する必要があります。

 

そして遺言書には、包括遺贈と特定遺贈の方法があります。

 

包括遺贈により財産を受け取ると、例え相続人に該当しない同性パートナーでも、相続人と同等の権利を得ます。

 

そして包括遺贈には、全部包括遺贈と一部包括遺贈の2種類があります。

 

全部包括遺贈とは以下のように、全ての財産を〇〇へ遺贈するといったシンプルな内容です。

 

ポイントは、必ず「包括して遺贈する」いう文言を必ず明示することです。

 

 

 

 

 

 

一方、一部包括遺贈とは、財産の内、一定割合(例:1/2)を遺贈するという内容です。

 

 

 

 

 

 

そして特定遺贈とは、特定の財産(預金、家屋など)を特定の人(子、孫)に指定して遺贈するという内容です。

 

 

 

 

 

 

同性パートナーに遺言書により財産を残す場合、全部包括遺贈による遺言書の作成が望ましいとされています。

 

その理由は、相続人不在という状況を避けるためです。

 

遺言書は全部包括遺贈で作成する

亡くなったパートナーに相続人がいない場合、相続人不在として、家庭裁判所から相続財産管理人が選任されることがあります。

 

このような場合、相続財産管理人により、その財産の処分・清算が行われます。

 

同性パートナーは相続人になることができないため、死亡したパートナーに両親や兄弟、その代襲相続人がいない場合、相続人が不在となります。

 

前述の遺言書の内、一部包括遺贈や特定遺贈の場合、過去の判例により、相続人不在と扱われる可能性があります。

 

相続人不在とみなされた場合、例えパートナーが遺言書を作成していても、遺言書通りに実行されない可能性があります。

 

 

 

 

 

 

ただし、「一切の財産を〇〇へ遺贈する。」という全部包括遺贈の場合、相続人不在とは扱われません。

 

同性パートナーの遺言書作成時は、「一切の財産を〇〇へ遺贈する。」という全部包括遺贈の形式を採用する方が、確実に財産を残すことができます。

 

だだし、全部包括遺贈の形式には、3つの注意事項があります。

 

全部包括遺贈は債務(負債)も相続する

全部包括遺贈は、相続人と同等の権利により、パートナーの全ての遺産を相続します。

 

当然遺産には、マイナスの財産である債務(負債)も含まれます。

 

パートナーに借金がある場合、その全ての借金も相続します。

 

 

 

 

 

 

全部包括遺贈を行う場合は、債務がないことや、大きな債務がないことを前提としておくことが望ましいと思われます。

 

同性パートナーが支払う相続税は1.2倍

同性パートナーが財産を相続し、相続税を支払うことになる場合、相続税額は1.2倍になります。

 

現在日本の法令では、配偶者や一親等(両親や子)以外の方が財産を相続した場合、相続税は1.2倍になります。

 

 

 

 

 

 

主に兄弟姉妹が財産を相続した場合が該当しますが、同性パートナーの場合も同様です。

 

遺留分侵害額請求の対象になる

全部包括遺贈によりパートナーに財産を指定したとしても、遺留分の問題は消滅しません。

 

パートナーの両親が生存している場合、全財産のうち、その1/3は両親に遺留分があります。

 

遺留分侵害額請求を起こされた場合、同性パートナーが金銭で支払う必要があります。

 

 

 

 

 

 

なお、パートナーの両親が既に死亡し、相続人が兄弟姉妹のみである場合、遺留分はありません。

 

この場合は、全部包括遺贈により遺言書を作成することで、パートナー全財産を残すことが可能です。

 

パートナーの家族とコミュニケーションが大切

遺留分の問題を解決する方法は、パートナーの家族とコミュニケーションを行うことです。

 

お互いの家族と顔を合わせ、家族同然の付き合いをすれば、パートナーが亡くなった際、その遺言書による意思表示を重んじるはずです。

 

しかし、全くコミュニケーションをとらなければ、赤の他人同然です。

 

突然顔も知らない他人に、財産の全てをもって行かれたら、パートナーの家族も良い顔をするはずがありません。

 

 

 

 

 

 

 

本当にパートナーに財産を残したいと思うのなら、お互いがお互いの家族にパートナーを紹介しましょう。

 

そしてお互いの家族と家族同然の付き合いができるよう、認めてもらう努力をしましょう。

 

コミュニケーションさえ円満に進めば、遺留分により争いは回避可能です。

 

LGBT当事者だからこそ、お互いがお互いの家族と紹介し合うことが非常に重要です。

 

根拠法令

民法第951条(相続財産法人の成立)

民法第952条(相続財産の管理人の選任)

民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)

民法第990条(包括受遺者の権利義務)

相続税法第18条(相続税額の加算)

まとめ

今回は同性パートナーの遺言書作成の注意点について、ザックリ説明しました。

 

パートナーに大きな債務等がないのであれば、全部包括遺贈が最もベターです。

 

そして同性パートナーだからこそ、お互いがお互いの家族と顔を合わせ、コミュニケーションをとることが必要です。

 

お互いの家族と意思疎通ができていてば、相続の争いを避けることが可能です。

 

LGBT当事者だからこそ、心がけましょう。