一般口座で株式を譲渡した場合の株式譲渡所得の計算方法

株式や投資信託で資産運用する方の多くは、特定口座を利用が一般的です。

 

特定口座は確定申告の際、自分で所得計算する手間が無いので、非常に有用な方法です。

 

しかし、うっかり特定口座受入を失念してしまったなど、一般口座で株式等を運用する方も、まだまだ一定数います。

 

株式譲渡をして初めて一般口座であることに気付く!という方も。

 

一般口座による株式譲渡損益の算出方法に悩む方も多いようです。

 

今回は、一般口座で保有する株式の譲渡損益の計算方法について、ザックリ説明します。

 

 

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ここでは総平均法に準ずる方法の計算書を、敢えて移動平均法の計算書で表現しています。

 

総平均法に準ずる方法で譲渡原価を算出する

通常の株式譲渡所得の計算方法は、以下の通りです。

 

 

 

 

譲渡収入とは、売却代金のことです。

 

また譲渡原価とは、売却した株式を購入した時の価格のことです。

 

単純にその差額が、株式譲渡所得です。

 

1株購入してその1株を譲渡した場合、譲渡原価の金額は明白です。

 

しかし、2回以上、同一銘柄株式を購入して譲渡する場合、いつ購入した株式を譲渡したのか?

 

疑問に思う方も多いようです。

 

複数回に渡り株式を購入した場合、その譲渡原価は、総平均法に準ずる方法で算出します。

 

総平均法に準ずる方法とは、いわゆる移動平均法のことです。

 

総平均法に準ずる方法と移動平均法は、明確な定義は異なります。

 

しかし、いずれも単価の算出方法と計算結果は同じです。

 

そして総平均法に準ずる方法を適用するためには、有価証券元帳が必要です。

 

以下、有価証券元帳の作成について説明をします。

 

ここでは移動平均法による有価証券元帳を例としています。

 

有価証券元帳の作成

以下は、有価証券元帳の一例です。

 

銘柄ごとに作成します。

 

 

 

 

購入した場合(赤い部分)は、数量×単価=購入金額を記載し、残株数(緑の部分)と単価を記載します。

 

そして株式を購入する度に、残株数の単価が変化します。

 

残株数の単価は平均単価です。

 

そして株式を売却した場合(青い部分)の単価は、直前の平均単価を記載します。

 

平均単価で株式を購入したと考えるからです。

 

以下、具体的な計算方法を説明します。

 

総平均法に準ずる方法の計算方法

以下、設例を元に株式譲渡益を算出します。

 

<設例>

取引年月取引内容株数単価購入代金売却代金
①1年5月購入300株80円24,000円 
②1年8月購入200株90円18,000円 
③1年9月売却300株50円 15,000円
④2年3月購入300株60円18,000円 
⑤2年7月売却100株90円 9,000円

 

上記の例を元に、総平均法に準ずる方法により、銘柄別に有価証券元帳を作成します。

 

有価証券元帳は、株式を購入する度に平均単価と数量を記録します。

 

そして払出(売却)があった場合、売却後の株数を記録します。

 

以下、上記の設例順に有価証券元帳を作成します。

 

 

【①1年5月に300株(@80円)で購入】

 

 

【②1年8月に200株(@90円)で購入】

 

2回以上購入したことで、平均単価が84円に変化しました。

 

平均単価の算出式は、(24,000円+18,000円)/(300株+200株)です。

 

 

【③1年9月に300株(@50円)で売却】

 

売却した300株の平均単価は、上記②より84円です。

 

譲渡所得は、15,000円(譲渡収入)−84円×300株=▲10,200円です。

 

売却後の残株数200株の平均単価は、当然84円です。

 

年が変わっても、有価証券元帳は連続して作成します。

 

 

【④2年3月に300株(@60円)で購入】

 

再び2回以上購入したことで、平均単価が69.6円に変化しました。

 

平均単価の算出式は、(16,800円+18,000円)/(200株+300株)です。

 

 

【⑤2年7月に100株(@90円)で売却】

 

売却した100株の平均単価は、上記④より69.6円です。

 

譲渡損益は、9,000円(譲渡収入)−69.6円×100株=+2,040円です。

 

有価証券元帳は、上記ように作成します。

 

一般口座で株式を保有する場合、必ず有価証券元帳が必要です。

 

有価証券元帳さえ記録しておけば、確定申告はスムーズに終了するため、以下に元帳を正確に記録しておくかが鍵となります。

 

根拠法令

所得税法第48条(有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)

所得税法施行令第118条(譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等)

 

まとめ

今回は一般口座で株式を譲渡した場合の計算方法について、ザックリ説明しました。

 

過去の取得金額が不明な場合、証券会社から証券元帳を取り寄せる必要があります。

 

一般口座で株式運用をする場合、必ず有価証券元帳の作成が必要です。

 

確定申告時期に慌てることがないよう、事前に準備しておくことが肝要です。